家族の一員として一緒に過ごしてきた愛犬との別れは、覚悟していたとしても受け入れ難い悲しみだろう。アメリカのある動物病院では、最後の瞬間を幸せに迎えて欲しいとの思いから安楽死を控えた犬たちのために用意した小さなギフトがある。犬にとっては危険なものとなり得るチョコレート菓子を、死の間際に与えているのだ。動物病院のこの計らいには、多くの人が胸を打たれているようだ。『WSVN 7News』などが伝えている。

米アラバマ州スミスズ・ステーションにある動物病院「Smiths Station Animal Hospital」は今月21日、米チョコレートメーカー「ハーシー(Hershey’s)」の“キスチョコ”がいっぱいに入った瓶の画像をFacebookに投稿した。このチョコレートは安楽死の予約が入ったとき犬に与えるものだという。

チョコレートの原料であるカカオ豆には“テオブロミン”という成分が含まれており、これを犬が過剰摂取することで中毒症状を引き起こしてしまう。犬がチョコレートを口にしてしまっても必ず中毒を起こす訳ではないが、摂取から4~5時間後に嘔吐や下痢などの症状が現れることがある。

こうした理由から犬にチョコレートを与えることは嫌厭されている。しかし犬にとっても美味であることは間違いなく、同動物病院では病気やケガなどで安楽死が最善の選択とされた場合に、最後のご褒美としてチョコレートを与えているのだ。

同動物病院で獣医として働くニコル・M・ナミエさん(Nicole M. Namie)は「私たちはとても辛く感情的になる時に、可能な限りの快適さを提供しようと心掛けています」と話しており、犬とその飼い主の両方に安らぎを与えるために以前からずっと行っている取り組みだという。

「本来チョコレートは患者さん(犬)にはお勧めできないおやつですが、最後の瞬間には何か特別なものを提供することが大切だと私たちは考えています。」

「飼い主たちが願うようなサービスではありませんが、このサービスについては喜んでいただけているようです。ペットがお腹と心を満たして天国へ行くことができると知り、それが飼い主たちの慰めになっています。」

実際の投稿には「この瓶は安楽死の予約が入った時のためのものです。チョコレートを味わうことなく天国に行く犬などいないのです」と書かれており、今月28日の時点で12万件以上シェアされ大きな話題を呼んだ。

病院スタッフは「こんなに大きな反響があるとは思っていませんでした」と驚いており、世界中から投稿に感動したという声が届いたそうだ。「これは世界中の人が、ペットへの愛情という少なくとも1つの共通の関心事を持っているということを示しています」と国が変われどペットへの愛は同じであるとコメントしている。

同動物病院ではこうした取り組みのほかに天気が良ければ外へピクニックに連れて行ったり、チーズバーガーを食べに行くなど何か特別なことをして最愛のペットと一対一で過ごす最後の時間を設けているという。

なおニコルさんは、安楽死について次のように述べている。

「私たちの顧客や患者は家族も同然ですので、患者を失う時はまるで自分の家族をなくした時と同じような悲しみに襲われます。患者である犬も家族に別れを告げていることを認識しており、時にそれは子どもたちの成長とともに10年以上の思い出を作ってきた家族ということもあるのです。」

「ペットの安楽死を選ぶことは、精神的にとても辛い時です。多くの場合、子ども達にとって初めての愛する人との別れとなるのです。」

画像は『The Washington Newsday 2021年9月24日付「No Dog Should Go ‘Without Tasting Chocolate,’ says Animal Hospital, which offers ‘Goodbye Kisses.’」』『Smiths Station Animal Hospital 2021年9月21日付Facebook「This jar is reserved for our euthanasia appointments…」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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