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長引く巣ごもり生活でテレビやスマホばかり見ていませんか? じつはそれ、目の機能を低下させるだけでなく「認知症」を引き起こす原因にも。3つの簡単ストレッチで“脳の老化”を予防しよう。

「スマホやパソコン、テレビなどの画面を見ている状態では、目は狭い範囲でしか動いていません。部屋などの狭い空間にいて、眼球運動がゼロに近い生活を続けていると、目を動かす領域が狭くなり、転倒リスクや視機能の低下につながります」

こう話すのは、アンチエイジング医学に詳しいスクエアクリニック院長の本間良子先生。

「眼球の運動量が減ると、ピントの調節能力が下がり、外出時に障害物との距離感や、段差が認識しづらくなります。体の筋肉が衰えるのと同じで、目の焦点の調節能力の衰えも、転倒などの事故のリスクにつながるのです。また、外出時に限らず、読書をしても文字を縦や横にうまく追っていけず、行を間違えて読み飛ばしたりしやすくなってしまいます。すると、外出がおっくうになって、運動不足を招いたり、読書する機会が減るなど、ますます目を動かす量が減ってしまうのです」(本間先生・以下同)

こうした“目の運動不足”が、視力の低下以外の不調の原因にもなっているのだ。

【“目の運動不足”チェックリスト】

□ コロナ禍で外出機会が減った
□ 文字を書かない日がある
□ 人や自転車にぶつかりそうになるときがある
□ スマホを1日30分以上使用する
□ 最近、本を読まなくなった

さらに眼球運動の減少は、なんと認知症のリスクにもなると本間先生は警鐘を鳴らす。

「眼球を動かすことは脳に刺激を与えます。焦点を一点に合わせるときには脳の司令塔である前頭前野に刺激がいき、活性化するのです。逆に、眼球をあまり動かさない生活をしていると、脳への刺激が減り、脳の老化を引き起こして認知症リスクを高めてしまいます」

では眼球を動かし、認知症を予防するには、いったいどんな対策を行えばよいのだろうか……?

「目の運動不足を解消するにはスマホやテレビの見すぎを避ける、毎日散歩に出かけて遠くを見るといった、目を動かす範囲を広げることが大切です。また、眼球のストレッチで意識的に目を動かすことも効果的です」

そこで今回、本間先生に、眼球を動かして認知症を予防する3種類の簡単ストレッチを紹介してもらった。

【たて・よこストレッチ】※顔は動かさず、目だけを動かすこと

(1)片手でペンを持ち、ペンを顔の左から右、右から左にゆっくり動かして、ペン先を目で追う。5往復行う。
(2)片手でペンを持ち、ペンを顔の下から上、上から下にゆっくり動かして、ペン先を目で追う。5往復行う。
(3)左右の手に1本ずつペンを持って、顔の両側で肩幅程度に固定し、ペン先を左右交互 に見る。5往復行う。
(4)左右の手に1本ずつペンを持って、顔の上と胸元で固定し、ペン先を上下交互に見る。5往復行う。

【遠近ストレッチ】

(1)目の前約10センチのところで親指を立て、ピントが合いにくくてもよいので、親指の爪を1秒凝視する。
(2)立てた親指の爪を見つめながら腕を前方に伸ばし、伸ばし切ったところで親指の爪を1秒凝視する。
(3)(2)の視線の延長線上で、いちばん遠くのものにピントを合わせて1秒凝視する。(1)〜(3)を10回繰り返す。

■最後は「顔傾けストレッチ」

【顔傾けストレッチ】

腕をほどよく伸ばした状態で顔を指に対して(1)斜め45度右上から、(2)斜め45度左上から、(3)斜め45度右下から、(4)斜め45度左下から、と顔を傾けながら、それぞれの視点で指を1秒凝視する。各1回ずつでOK。

※3つの眼球ストレッチはメガネコンタクトレンズを装着したまま行ってもよい。もしも、めまいや気分が悪くなるなどしたら、すぐに中止すること。

■ピントが合わないときはまばたきをしよう

3つのストレッチは、毎朝、「歯磨きついで」に行うくらいがちょうどよいと本間先生はいう。

「朝行うことで1日スッキリとした視野で生活できます」

また、各ストレッチは「10回繰り返すのが理想」だそうだが、

「『10回では大変だ』、という方は、5回ずつでも構いません。無理なく、継続することのほうが重要です。ただし、やりすぎには注意してください」

「遠近ストレッチ」でなかなかピントが合いにくい人でも、心配はいらないという。

「必ずしもピントは合わなくても構いませんので、親指の爪を1秒間、凝視しましょう。ピントが合いにくい場合は、まばたきをすると焦点が合いやすくなりますので、何度かまばたきしながら行ってみましょう」

毎朝1分でできる3種類の眼球ストレッチを取り入れて、認知症を予防しよう。