コロナ禍において家計が厳しい方も少なくないでしょう。ソニー生命が2021年3月に公表した、大学生以下の子どもがいる20歳以上の男女1000名に行った「子どもの教育資金に関する調査2021」によると、コロナ禍の影響で家計が「改善(計)」と答えた人は25.2%、「悪化(計)」と答えた人は74.8%でした。

中でも「教育資金としての備え」は、「増加(計)」が38.6%、「減少(計)」が61.4%に。家計状況が厳しくなり、食費やレジャー費を切り詰めるだけでなく、教育費の減少まで影響が及んでいると分かります

よくいわれる「教育費に1人1000万円以上」ですが、その金額の大きさから、またコロナ禍の影響もあり、教育費に不安が増したり子どもを諦めようか悩まれたりする方もいるでしょう。

たしかに1000万円は大金ですが、0歳~22歳までにかかる金額はさまざま。それぞれの金額を明確にすることで「ここまでは生活費から捻出して、ここからは貯金する」という線引きができ、「いつまでに、いくら貯める」と具体的な目標が立られます。

具体的にどの時期にいくら費用がかかるかをみていきましょう。

幼稚園~高校3年生までの学習費と、塾費用などは?

まずは文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」から、幼稚園~高校3年生までにかかる金額について、公立と私立に分けてみていきます。

子ども一人あたり、1年間にかかる学習費総額(平成30年度)

【公立】

  • 公立幼稚園: 22万3647円

  • 公立小学校 :32万1281円

  • 公立中学校 :48万8397円

  • 公立高等学校(全日制) :45万7380円

【私立】

  • 私立幼稚園 :52万7916円

  • 私立小学校: 159万8691円

  • 私立中学校 :140万6433

  • 私立高等学校(全日制): 96万9911円

公立幼稚園~高校までの金額を1ヶ月にすると、月2~4万円ほど。私立になるとその2~5倍です。ただし令和元年10月より幼児教育・保育の無償がスタートしたため、3~5歳児クラスは利用料無料です(幼稚園は月額2万5700円まで。通園送迎費、食材料費、行事費などは保護者負担)。

幼稚園から高校までの学費は、公立であれば日々の生活費から捻出するよう計画するといいでしょう。

この中でも、気になるのが「塾」や「習い事」費用。特に中高校生を中心に見ていきます。

子ども一人あたり、1年間にかかる「補助学習費・その他の学校外活動費」

  • 公立中学校:24万4000円・6万2000円

  • 私立中学校:22万円・11万円

  • 高校:14万8000円・3万円

  • 高校:19万4000円・5万7000円

※補助学習費…予習・復習・補習など、学校教育に関係する学習をするために支出した経費  。学習机や参考書等の購入費、家庭教師、通信添削等の通信教育、学習塾へ通うための経費など
※その他の学校外活動費…知識や技能を身に付け、豊かな感性を培い、心とからだの健全な発達を目的としたけいこごとや学習活動、スポーツ、文化活動などの経費

上記では月2~3万円ほどですが、実際には学年別の差が大きく見られます。公立学校では多い順に「中学3年生で40万8000円、中学2年生で28万8000円、高校3年生で23万2000円」、私立学校は「小学6年生で86万1000円、小学5年生で72万8000円」です。

中学受験なら小学生から、高校受験なら中学生2~3年生、大学受験なら高校3年生で塾費用が増えます。夏期講習や冬期講習で金額が大きくなる場合もあるため、高校受験なら中学生からの塾費用に向けて準備しておきたいところです。

それでは、パターン別に幼稚園から高校生までの金額を確認しましょう。

幼稚園3歳~高校3年生までの15年間の学習費総額 (平成30年度)

  • すべて公立:約541万円

  • 幼稚園のみ私立:約635万円

  • 幼稚園と高校のみ私立:約788万円

  • すべて私立:約1830万円

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

大学の入学費用や在学費用は?

次に、教育費の中でもお金がかかるといわれている「高校と大学などの入学費用」と「大学の在学費用」を、2020年10月30日に発表された日本政策金融公庫の「令和2年度『教育費負担の実態調査結果』」からみていきます。

子ども1人あたりの入学費用

  • 高校:36万5000円

  • 高専・専修・各種学校:50万4000円

  • 短大:60万400円

  • 大学:89万7000円(私立文系95万1000円、私立理系94万000円、国公立大学77万円)

※入学費用とは、受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への入学納付金です。

先ほどの塾費用とあわせて、入学費用も同時に準備したいところ。中学3年生の塾費用と高校の入学費用をあわせて約80万円。高校3年生の塾費用と私立文系の入学費用で約130万円です。

公立で高校と大学を受験する場合、200~250万程度貯金しておくといいでしょう。200万円を中学2年生(13歳)までに用意するには、毎月1.3万円の貯蓄が必要です。

それでは、大学の1年間の在学費用の平均と、私立と国公立に分けた金額を確認しましょう。

1年間の在学費用

  • 大学:157万3000円

  • 私立理系:192万2000円

  • 私立文系:152万1000円

  • 公立大学:115万円

※在学費用とは、学校教育費(授業料、通学費、その他の学校教育費)と家庭教育費(塾や通信教育など補助教育費、おけいこごとにかかる費用)です。

大学費用は4年間で私立文系なら約600万円、私立理系で約770万円、国公立大学で約460万円です。大学在学中も月々の貯金とボーナスで在学費用を貯めると考えると、大学費用の半分~3分の2は入学前に貯めておきたいですね。600万円の3分の2である400万円を17歳まで貯めるには、毎月約2万円貯蓄することになります。

教育費用をみると、まとまったお金がかかるのは以下のタイミングですね。

  • 受験に向けた塾費用

  • 高校と大学などの入学費用

  • 大学などの在学費用

ただし子どもが何歳から貯め始めるかにより、毎月の貯蓄金額は変わります。乳幼児の頃は女性が働くのが難しく、なかなか貯蓄できない場合もあるでしょう。また子どもが2人以上いれば、その分貯蓄額が増えます。入学が重なると同時期に多額の資金が必要となるため、前もって計算しましょう。

教育費の貯め方は?

教育費の柱となるのは、まず「児童手当」です。3歳未満は一律月1万5000円、3歳以上小学校就学前までは月1万円(第3子以降月1万5000円)、中学生は一律月1万円に(※所得制限があり、所得が一定以上の方は特例給付の5000円となります。2022年10月より年収1200万円以上ならゼロになります)。

児童手当を全額貯金すると以下の通り。

【児童手当】0~3歳まで1万5000円、3歳~中学生まで1万円の場合

  • 0~3歳未満:1万5000円×12カ月×3年=54万円

  • 3歳以上~中学生:1万円×12カ月×12年=144万円

54万円+144万円=198万円
※生まれた月により金額は異なります。

児童手当を貯めるだけでも約200万円となると少し安心ですね。

他の貯蓄方法として、基本は確実に貯められる預金です。自動積立定期預金なら、毎月自動で引き落とされます。途中で引き出してしまうリスクを減らすためにも、教育費を貯める口座のカードは持ち歩かないなどの工夫をしましょう。

貯金と組み合わせるものとして、学資保険や低解約返戻金型終身保険があります。低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間中の返戻率を少なくすることで、保険料が割安に設定されている保険です。

ただ、途中で解約すると学資保険は元本割れする可能性がありますし、低解約返戻金型終身保険は大きく下回ります。また学資保険の加入は子どもの年齢が0~6歳までと決まっている場合も多いもの。それぞれメリット・デメリットを洗い出して検討しましょう。

他に、毎月コツコツと積み立てながら増やす方法として、投資信託もいいでしょう。ただし元本割れのリスクや、短期間では思うように利益を感じられない場合もあります。貯金の一部からはじめてみるといいでしょう。

予期せぬ理由での家計急変は「高等教育の修学支援制度」も

一方で、今回のコロナ禍のように、予期せぬ理由で家計が大きく急変することもあります。この場合、条件に当てはまれば「高等教育の修学支援制度」、いわゆる大学無償化が利用できる場合もあります。

対象となるのは、住民税非課税世帯とそれに準じる世帯。たとえばふたり親で子どもが2人(本人と中学生の下の子)がいる場合、年収約380万円まで対象です(※基準を満たす世帯年収は家族構成などにより異なり、資産や子どもの成績やレポートなどの基準もあります)。

家計急変後の所得の見込みで要件を満たすと判断される場合は、すぐに支援も始まります。わが家が当てはまるか確認したり、情報として知っておくのもいいでしょう。

人生三大支出ゆえに不安もある教育資金ですが、金額を明確にしたり、利用できる制度を調べたりすることで印象も変わります。わが家に合った具体的な貯蓄期間と金額を計算したり、制度を調べたりしてみてくださいね。

参考資料