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はじめに

4ドアのパフォーマンスクーペというスタイルは、なにも最近になってはじまったものではない。ラゴンダはかなり前からこのアイデアを示していたし、フェラーリ1980年代に、エンツォにお気に入りだと言わしめたコンセプトカーのピニンを送り出している。歴史あるメーカーのほとんどが、この手の試作を行ったのではないだろうか。

【画像】アルピナB8グランクーペとライバル 全15枚

しかしながら、このフォーマットが現実の商品となったのは最近のことだ。ポルシェアウディメルセデスやアストン マーティンフォルクスワーゲン、そしてBMWが、それを立て続けに送り出した。あのヒュンダイさえ、i30 Nファストバックという、この種のモデルを投入しているが、これはあまりひとびとの記憶に残っていないかもしれない。

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テスト車:アルピナB8グランクーペ    MAX EDLESTON

数多くのメーカーがさまざまなやり方を試しているが、その成功の度合いはまちまちといえる。パナメーラは2009年の登場以来、ポルシェの収益を下支えしているが、ほかのモデルは十分なセールスを達成しあぐねている。

結局、この類のクルマたちはスリークなデザインに付加価値を求め、ベースとなっているセダンより高価でありながら、実用性は犠牲にしている。合理的な選択肢だとは、とてもじゃないがいえない。

それは、今回のテスト物件に関してもにたようなものだ。13万4950ポンド(約1889万円)というアルピナB8グランクーペは、9万3000ポンド(約1302万円)のB5ビターボに比べるとかなり割高に思える。4.4LのV8エンジンはもちろん、シャシーの大部分とサスペンションの基本設計は共通なのだから。

英国での販売台数はごくわずかなものにとどまるだろう。それでもわれわれは、思い切ってロードテストの対象に選んだ。というのも、これはアルピナの新たなフラッグシップであり、それだけに間違いなくめざましいものを見せるクルマになっているはずだからだ。

高嶺の花が居並ぶこのカテゴリーで、アルピナの4ドアクーペは頂点に輝けるのか。このところ強さを見せ続けているアルピナだが、622psのB8グランクーペもその列に加わるのか、興味津々だ。

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

もともとB8は、M850i xドライブとしてこの世に生を受ける。しかし、アルピナの手に渡ると、センタートンネルをカーボン部材で補強したボディの下は、シャシーの基本骨格以外の大部分が作り替えられる。

まずはBMW製N63型V8だ。4395ccの排気量こそそのままだが、新たにより速く回るツインスクロールターボが、左右シリンダー間のVバンクに装着される。さらに、アップグレードしたピストンスパークプラグも組み込まれる。

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アルピナ独自のエアロパーツの中でもっとも目を引くのが、フロントスプリッター。このクルマに求められる強力な冷却性能や、320km/hオーバーでのスタビリティを得る上で重要な役割を担う。ロゴが輝くこの装飾は、410ポンド(約5.7万円)のデコセットに含まれる。    MAX EDLESTON

しかし、エンジンルーム内でもっとも大掛かりな改修を施されるのは、冷却システムだ。ベース車より50%拡大された新型インタークーラーをインストールし、エンジンのパワーとトルクだけでなく、高速巡航時の信頼性も引き上げる。結果として最高速は、M850iがリミッターで250km/hに絞っているのに対し、B8は323km/hを謳うに至っている。

ZF製の8速ATもモディファイされ、強化されたプラネタリーホイールと追加の冷却系、新設計のアルミオイルパンを装備。73.7kg-mから81.6kg-mへ増強されたトルクを受け止める。ギアボックスを制御するソフトウェアも書き換えられ、より素早い変速と、M850iでは行えない1アクションでの多段ダウンシフトを可能にした。

それに続くプロペラシャフトは、強度が高められている。xドライブ4WDシステムのトルク配分の性質もBMWのオリジナルから変更され、より優れたスタビリティとニュートラルさを追求している。

駆動力が行き着く先には、アルピナの特徴的なアイテムであるマルチスポークホイールが据え付けられている。鍛造品であるそれは、8シリーズ系モデルの純正ホイールでは最大となる21インチ。そのサイズは伊達ではなく、地面に向かって伸びたフロントスプリッターや、床下に追加配置された冷却装置によって、M850iより余計に必要となった路面とのクリアランスを稼ぐために選択されている。

乗り心地とハンドリングに関する部分を、アルピナが手付かずにしておかないのは当然のこと。電動アシストのステアリングは再調整。サスペンションのジオメトリーは変更され、ネガティブキャンバーがキツくなっただけでなく、少なくともリンクのひとつは刷新されている。

8シリーズといえば、いまだにエアスプリングよりスティールのコイルを重用している。アルピナは、アイバッハ製の専用スプリングと独自チューンのダンパーを組み合わせ、BMWにはないコンフォートプラスモードを用意して、より一層しなやかな乗り味を提供する。また、フロントストラットには新開発の油圧マウントを採用し、タイヤはピレリの騒音低減技術であるPNCSを採用したPゼロの専用開発品を履く。

加えてB8は、アルピナ専用のスポーツリアディファレンシャルを装備するが、基本的にこれはM850iの電子制御LSDのプログラムを見直したもの。同様に、アクティブスタビライザーや後輪操舵もプログラムを変更し、スタビリティとコントロール性の改善が図られている。

内装 ★★★★★★★★★☆

B8のインテリアは、アルピナ独自の装飾などを別にすれば、装備が充実した仕様の8シリーズ・グランクーペにかなり近い。

デジタルメーターには、アルピナのイメージカラーが盛り込まれている。ステアリングホイールは贅沢にラヴァリナレザーで覆われ、ステッチはパッドへ埋もれるように入れられているので、新品でも握った感触がナチュラルで心地いい。

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寝かされたフロントウインドウとAピラー、流れるようなインテリアのデザインなど、GTカーならではの世界観を満喫できるキャビン。レザーの質感や色使いが、さらに贅沢さを高めている。    MAX EDLESTON

ヘッドレストやマットなど、随所にあしらわれるのは、クランクシャフトとキャブレターをモチーフにしたアルピナの紋章だ。トランスミッショントンネルには、シリアルナンバーが刻まれたプレートが取り付けられている。

キャビンはまた、B8グランクーペと、B5ビターボの大きな差別化ポイントでもある。フロントウインドウは明らかに短く、アルカンターラ張りのAピラーは急角度で寝かされ、センターコンソールの流れるような造形はセダンよりGTカー的な性質であることを示している。

テスト車の2トーン仕上げの革内装は、この上なくソフトなオプションのメリノレザーが、ダッシュボード全体をも覆っている。より特別な空間を演出する仕立てだが、1万4400ポンド(約202万円)を追加すれば、すべてラヴァリナレザーに変更して、よりスペシャルな雰囲気にひたることも可能だ。

ここまで贅沢なムードは、B3やB5ビターボといった、アルピナの中でもよりポピュラーなモデルではまず得られない。B7やB8グランクーペのようなフラッグシップならではの道楽、といってもいい。

マテリアルのリッチな質感は、後席に移っても薄らぐことはない。8シリーズ・グランクーペがそうであるように、B8でも背の高い大人が十分寛げる広さもある。分割パノラマルーフを装着したとしても、ヘッドルームに不足はない。

しかしながら、さすがにコンソールが足元に陣取る中央席では妥協を強いられるので、4シーター+補助席の5人乗りだと割り切るのが無難だ。左右席はヘッドレスト一体型の独立シートのような形状だが、トランクルーム内のレバーを操作して前倒しすることができる。

走り ★★★★★★★★★☆

少なくとも最近まで、アルピナの6気筒ツインターボモデルは、ベース車が共通するBMW Mモデルにパワーデリバリーのリニアさで肩を並べるにはやや足りず、とくに中回転域ではブースト感が強いフィーリングだった。しかしB8は、それとはまったく違う。

このクルマは驚くほどパワーデリバリーがリニアで、トルクのリザーブ量もじつに莫大なものに思える。それでいて鋭く回り、歯切れよくスムースに変速する。本当に円熟味のある、よくしつけられたパワートレインは、長距離を走る速いGTカーには最適で、期待通りの実力を発揮してくれて、余力も十分にある。

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リニアゆとりあるエンジンとうまくチューニングされたトランスミッションが4WDシステムと相まって、12気筒のフライングスパーすら凌ぐ加速性能を発揮する。    MAX EDLESTON

アルピナチューンのN63型V8に懸念があるとすれば、どのようなサウンドを聞かせてくれるのかという点だ。ブーフローエのエンジニアたちは、BMWのデジタルエンジン音合成ソフトをいじって、M850iよりナチュラルな性質の音作りを目指したが、その試みが大成功を収めたとはいえない。

競合するV8エンジンのGTカーには、もっと音的な魅力が感じられる。もちろん、アルピナは洗練性とソウルフルさの融合を狙ったわけで、そこから逸れているとしても、大きく的を外しているわけではない。

そしてパフォーマンスに関しては、当然ながら大外しすることはない。われわれが計測した加速タイムは、0-97km/hが3.5秒で、0-161km/hが7.8秒。どちらについても、メルセデスAMGGT63 4ドアクーペのほうがわずかに速く、GT63 Sになるとその差は広がるはずだ。

だが、12気筒のベントレー・フライングスパーよりは、まるまる1秒先に161km/hへ到達する。アストン マーティンDBSスーパーレッジェーラでさえ、129km/hを超えないとB8からリードを奪えない。

四輪駆動トルクが太くて融通が効くフィールのパワーデリバリーが協調し、グイグイ進んでいくさまは、驚天動地の速さを感じる。このエンジンの推進力は、ほぼどの回転域でも発揮され、シフトチェンジの巧みさは、もっとラフな走りのライバルたちではなし得ないものだ。

トップギアでは、英国の高速道路の制限速度内で1750rpmを超えることはまずない。しかも、すばやい加速がしたいときには、ペダルを大きく踏み込むだけで、すばらしく直感的にキックダウンする。また、変速ロジックはカントリーロードを楽しみながら速く、流れるように走るのにぴったりで、麗しい作りのシフトパドルに指をかけなくてもいいくらいだ。

使い勝手 ★★★★★★★★★☆

インフォテインメント

12.3インチ画面のデジタル計器盤は、アルピナのイメージカラーであるブルーとグリーンをあしらっているが、インフォテインメント関係はいずれも、最新のBMWの大型車に用いられているシステムそのものだ。

つまり、最上級機種のライブコクピットプロフェッショナルが付いてくるということになる。ダッシュボードの高い位置には10.3インチディスプレイが、上に突き出してはいるがきれいに収まる。トランスミッショントンネル上にはおなじみのダイヤル式コントローラーが設置されるが、画面をタッチしての操作もできる。

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BMWがベースなので、インフォテインメント関連の満足度は高い。同時に、どうにもなじめないレイアウトのメーターパネルがもれなくついてくるのは玉にキズなのだが。    MAX EDLESTON

このシステムは直感的に使えるが、その理由はメニューのレイアウトだけでなく、マップやメディア、電話などの主要な機能が実体ボタンで呼び出せることにもある。

標準装備のハーマンカードン製サウンドシステムもなかなかいい出来だ。ただし、4000ポンド(約56万円)のバウワース&ウィルキンス製オーディオも用意されている。

どうしてもなじめないのは、向かい合わせになった速度計と回転計だ。おそらくBMWは、計器盤面のすみずみまで埋める必要があると考えたのだろうが、そのせいで読み取りにくくなってしまっている。

燈火類

テスト車は、1650ポンド(約23.1万円)のBMW製レーザーライト・ヘッドライトを装着していた。みごとなアイテムだが、これまでの経験からすれば、標準仕様のLEDヘッドライトでも性能は十分以上だといえる。

ステアリングとペダル

ドライビングポジションはよくできていて、しかもステアリングホイールにもシートにも十分な調整幅がある。ただし、ポルシェパナメーラほど低く座らされている感覚はない。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

B8はGT63やパナメーラに比べると、アジリティや後輪駆動的なバランスで同レベルには達していない。サスペンションと駆動系は、その挙動からすると、スタビリティとトラクションをなによりも重視したセットアップだ。それゆえ、最高峰のハンドリングを誇るGTカーを際立たせるような操縦性の冴えは得られていない。

にもかかわらず、B8は上々のコーナリングバランスと目を見開くようなアジリティをみせる。それは、うまくチューニングされた後輪操舵を備える大型車に見出せる類のものだ。しかしペースを上げると、簡単にオーバーステアを引き起こすことは拒む。

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コーナリング時のプライオリティは、スタビリティやバランス、トラクションに置かれていて、後輪操舵はうれしいくらいのアジリティを約束してくれる。それを裏打ちするのが、自信をもたらしてくれるステアリングの正確さだ。    MAX EDLESTON

早めに前輪へトルクを送り、スタビリティを確立することは妥協せず、先に挙げたライバルたちに比べるとよそよそしい印象が強い。もっともアグレッシブな走行モードでは、競合モデルたちが安定性の十分なマージンを強力な余剰トルクが上回っても構わないといったセッティングなのに対し、アルピナはそれを認めないのだ。

だからといって、このクルマとの一体感が欠けているというわけではない。むしろ、そこからは掛け離れている。ステアリングにはたしかな満足感がある。M850iばかりか、正真正銘のスポーツカーの多くのそれよりリニアで、すばらしく正確。どれだけサスペンションに大きな負荷がかかっていてもそうなのだ。

このクラスには、これよりインフォメーション豊かな操舵系もあるが、それでもこの掛け値なしに大きなクルマを、たとえ狭い道でも、きっちり位置決めできる自信をおおいにもたらしてくれる。そのことは、アルピナがすべての自社モデルに持たせようとしている扱いやすさの一助となる。

このクルマが、現実的なシチュエーションで使われることを考慮して造られているという感覚は、ボディコントロールにもはっきり表れている。日常的な走行シーンで、スプリングレートが高すぎるのではないか、もしくはサスペンションのダンピングが足りないのではないか、といった疑問を感じることはまずない。

B8はいかなる路面も穏やかに減衰しているように感じられ、スピード感を伝える程度のロールも、見かけによらずうまく隠してくれるが、ルーズ感はまったくない。極限的なコントロールではこれより優れるクルマもあり、過度にハードな走りをするとそこに気付かされるかもしれない。

しかし、B8が公道志向の運動性を満足いくものに仕上げられていることを考えると、限界域での操縦性でライバルに一歩譲ったとしても、そこを許容するのは簡単なことだ。

快適性/静粛性 ★★★★★★★★★☆

B8の巨大なホイールと低扁平タイヤをひと目見て、アルピナが物欲をそそるルックスのために乗り心地を犠牲にするのは賢明なことなのかと考えずにいられないのではないだろうか。

たしかに、なめらかさは多少ながら引き換えにしているが、それに気付かされることはそうそうない。低速域でも高速域でも、B8がみせる動きは、フロントに35扁平、リアに30扁平のタイヤを履く600ps級のパフォーマンスカーであるという根本的な事実をものともしないほど穏やかだ。走りの洗練性に関していえば、GT63やパナメーラに対して明らかなアドバンテージがある。

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ロープロタイヤを履き、金属スプリングのサウペンションを用いる600ps級のパフォーマンスカーであることを、B8のしなやかな走りは忘れさせる。静粛性も高い。    MAX EDLESTON

このクラスのクルマなら、優れたプライマリーライドに期待するかもしれないが、このアルピナの場合、ほかに差をつけるのは荒れた舗装や路面の波打ち、窪みに面したときのセカンダリーライドだ。単に2点間を移動するだけのときにも、すばらしい相棒となってくれる。

また、エアスプリングにすれば黙って優れた乗り心地を提供してくれるというものではないことを、このクルマは教えてくれる。正しいノウハウさえあれば、オールドスクールなスティールスプリングダンパーの組み合わせでもいい仕事をさせることができるのだ。

そうはいっても、先進技術の助けは間違いなくある。アクティブスタビライザーの貢献度は、疑うべくもないところだ。このデバイスは、直線走行時にはほぼ完全にカットすることができる。ダンパーアルピナ独自のコンフォートプラスモードにセットすると、しなやか極まる走りを味わえる。

高速道路の速度域でタイヤから生じる非常に微かな反響音を別にすれば、静粛性の高さも喜ばしいほどだ。GT63が72dBAだった113km/h巡航時の室内騒音は、B8では67dBAにとどまった。この差はかなり大きい。もっとも、フライングスパーの64dBAには及ばなかったのだが。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

13万5000ポンド(約1890万円)という価格は、メルセデスAMGポルシェが比較対象になるレンジだ。性能や希少性でも、それらと比べるのが妥当だろう。

ベース車であるM850i xドライブより3万5000ポンド(約490万円)も高いことに疑問を感じる、という声は上がるかもしれない。だが、パワートレインやシャシーに施されたアルピナチューンの内容を精査すれば、その差額にも納得するはずだ。

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アルピナの残価率はAMGと同等で、1年後までに急落するとみられる。そして、どちらもベントレーには敵わない。

B8にもっとも近いライバルは、身内のB5ビターボかもしれない。パフォーマンスもハンドリング特性も同等でありながら、4万ポンド(約560万円)も安いのだ。しかも、リセールもかなりいい。とはいえ、スタイリングのエレガントさには開きがある。

ロングノーズの大排気量GT系モデルは、えてして値落ち幅が大きい。B8もその例外ではなく、走行2万km弱で5万ポンド(約700万円)ほども下がると予想される。

スペック

レイアウト

B8グランクーペのレイアウトは、アルピナの典型的なそれだ。つまり、多気筒エンジンを縦に置いたFRベースである。ただし、このクルマにはBMWのxドライブこと可変4WDシステムが搭載される。

ボディそのものは、BMW M850iグランクーペのそれを流用している。しかしサスペンションは入念にチューニングされ、とくにフロントのジオメトリーはかなり変えられている。

エンジン

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基本的なレイアウトは、ベースとなったBMWのそれを基本的に流用している。いっぽうで、サスペンションはかなり念入りな修正が加えられている。

駆動方式:フロント縦置き四輪駆動
形式:V型8気筒4395ccツインターボチャージャー、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ89.0×88.3mm
圧縮比:10.5:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:622ps/5500-6500rpm
最大トルク:81.6kg-m/2000-5000rpm
エンジン許容回転数:6500rpm
馬力荷重比:296ps/t
トルク荷重比:38.9kg-m/t
エンジン比出力:141ps/L

ボディ/シャシー

全長:5092mm
ホイールベース:3023mm
オーバーハング(前):957mm
オーバーハング(後):1112mm

全幅(ミラー含む):2150mm
全幅(両ドア開き):3860mm

全高:1428mm
全高(トランクリッド開き):1750mm

足元長さ(前席):最大1150mm
足元長さ(後席):最大780mm
座面~天井(前席):最大1020mm
座面~天井(後席):890mm

積載容量:440L

構造:アルミモノコック
車両重量:2100kg(乾燥重量・公称値)/-kg(実測値)
抗力係数:0.34
ホイール前/後:8.5Jx21/10.0Jx21
タイヤ前/後:245/35 ZR21285/30 ZR21
ピレリPゼロALP
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:8速AT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:5.00/9.5 
2速:3.20/14.8 
3速:2.14/22.0 
4速:1.72/27.5 
5速:1.31/36.0 
6速:1.00/47.3  
7速:0.82/57.6   
8速:0.64/73.9   
最終減速比:2.81:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:7.8km/L
ツーリング:-km/L
動力性能計測時:-km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):5.1km/L
中速(郊外):8.2km/L
高速(高速道路):10.1km/L
超高速:9.5km/L
混合:8.4km/L

燃料タンク容量:68L
現実的な航続距離:533km
CO2排出量:270g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラットコイルスプリング、アクティブスタビライザ
後:マルチリンク/コイルスプリング、アクティブスタビライザ

ステアリング

形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.3回転
最小回転直径:12.6m

ブレーキ

前:395mm通気冷却式ドリルドディスク(オプション)
後:360mm通気冷却式ドリルドディスク(オプション)
制御装置:ABS、EBD
ハンドブレーキ:電動、センターコンソールにスイッチ設置

静粛性

アイドリング:38dBA
全開時(3速):83dBA
48km/h走行時:58dBA
80km/h走行時:61dBA
113km/h走行時:67dBA

安全装備

ABS/EBD/DSC/DBC/DTC
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
交通弱者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温19℃
0-30マイル/時(48km/h):1.6秒
0-40(64):2.2秒
0-50(80):2.8秒
0-60(97):3.5秒
0-70(113):4.4秒
0-80(129):5.4秒
0-90(145):6.5秒
0-100(161):7.8秒
0-110(177):9.3秒
0-120(193):11.1秒
0-130(209):13.2秒
0-140(225):15.6秒
0-150(241):18.8秒
0-160(257):22.3秒
0-402m発進加速:11.7秒(到達速度:198.4km/h)
0-1000m発進加速:21.1秒(到達速度:252.7km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
メルセデスAMG GT 63 4ドアクーペ 4マチック+(2019年)
テスト条件:乾燥路面/気温14℃
0-30マイル/時(48km/h):1.4秒
0-40(64):1.9秒
0-50(80):2.5秒
0-60(97):3.3秒
0-70(113):4.1秒
0-80(129):5.2秒
0-90(145):6.3秒
0-100(161):7.7秒
0-110(177):9.1秒
0-120(193):10.9秒
0-130(209):12.9秒
0-140(225):15.2秒
0-150(241):18.4秒
0-160(257):22.2秒
0-402m発進加速:11.5秒(到達速度:198.9km/h)
0-1000m発進加速:20.9秒(到達速度:252.5km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):1.4秒(2速)/2.3秒(3速)/2.7秒(4速)

30-50(48-80):1.3秒(2速)/1.8秒(3速)/2.2秒(4速)/3.4秒(5速)

40-60(64-97):1.8秒(3速)/2.2秒(4速)/2.8秒(5速)/4.3秒(6速)/6.6秒(7速)

50-70(80-113):1.8秒(3速)/2.2秒(4速)/2.9秒(5速)/3.8秒(6速)/5.4秒(7速)

60-80(97-129):1.9秒(3速)/2.2秒(4速)/2.9秒(5速)/3.9秒(6速)/5.1秒(7速)/8.6秒(8速)

70-90(113-145):2.3秒(4速)/3.0秒(5速)/4.0秒(6速)/5.3秒(7速)/7.9秒(8速)

80-100(129-161):2.5秒(4速)/3.1秒(5速)/4.2秒(6速)/5.5秒(7速)/7.8秒(8速)

90-110(145-177):2.8秒(4速)/3.3秒(5速)/4.4秒(6速)/5.8秒(7速)/8.3秒(8速)

100-120(161-193):3.4秒(5速)/4.7秒(6速)/6.1秒(7速)/9.0秒(8速)

110-130(177-209):3.8秒(5速)/5.0秒(6速)/6.6秒(7速)

120-140(193-225):4.3秒(5速)/5.2秒(6速)

140-160(225-257):5.5秒(6速)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温19℃
30-0マイル/時(48km/h):8.4m
50-0マイル/時(64km/h):22.9m
70-0マイル/時(80km/h):44.5m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.82秒

ライバルの制動距離

メルセデスAMG GT 63 4ドアクーペ 4マチック+(2019年)
テスト条件:乾燥路面/気温14℃
30-0マイル/時(48km/h):8.7m
50-0マイル/時(64km/h):23.3m
70-0マイル/時(80km/h):45.3m

各ギアの最高速

1速:61.2km/h(6500rpm)
2速:96.6km/h(6500rpm)
3速:143.2km/h(6500rpm)
4速:178.6km/h(6500rpm)
5速:235.0km/h(6500rpm)
6速:307.4km/h(6500rpm)
7速:323.5km/h(5615rpm)
8速(公称値):323.5km/h(4383rpm)

8速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):1526rpm/1744rpm

結論

アルピナのトップモデルは、まさしくパフォーマンスをはじめとする性能を誇示するものであって然るべき存在だ。その点、B8グランクーペに失望させられることはない。

直線でのパフォーマンスは最新のスーパーカーに迫る勢いでありながら、デリバリーの性質はこれ以上ないほど豪華な4ドアGTの走りにふさわしいものだ。さらに、ずば抜けて安心感のあるクルマで、極限状況でも安定しており、天候を問わず自信を持ってドライブできる。

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結論:このうえない円熟味を感じさせてくれるのだが、ルックスが期待させる運動性能には不足を覚えるところもある。    MAX EDLESTON

それらに加えて、ディテールに至るまではっきりわかるアルピナのエンジニアリングや、ややおもしろみに欠けるものの、マテリアルのリッチさには文句のつけようがないインテリアも備わる。結果として、フラッグシップと呼ぶに値するものができあがっている。

指摘すべき点があるとすれば、エンターテインメント性に関する部分だろうか。結局これはエレガントなGTタイプのクルマで、その物腰は、不条理なほどの速さや信頼度の高い運動性を超えたものをもたらしてくれるに違いないことを示している。

俊敏で、操縦系はみごとなまでにリニアだが、アルピナのDNAが生きるハンドリングの冴えが加われば、さらによくなっただろう。現状では、低く流麗なボディの下に息づく性格のコアとなる部分は、B8より安価なB5ビターボとほとんど変わらないのだ。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

これは欧州市場を本気で考えたクルマではない。主戦場はアメリカで、XB7とともに、巨大でとことん豪華なものをほしがる顧客を取り込むために造られたのだと思う。とはいうものの、長距離走行で甘美な乗り心地を味わったあとでさえ、B級道路でみせたアジリティに感じた衝撃を忘れられずにいるのだが。

マット・ソーンダース

じつにスペシャルなマシンだが、この値付けを理解するのには苦労する。これだけの金額を払うなら、個人的にはベントレー・フライングスパーに食指が動く。B8ほどスポーティではないにしても、それも含めて納得できる。

オプション追加のアドバイス

これほど広いキャビンだと、メリノレザーへのアップグレードも高くつくが、われわれは常に、アルピナのそれは追加出費するだけの価値があると思ってきた。それは、B8でも変わらない。M850iでは得られない満足感にひたれる。CNC加工のシフトパドルもまた、エクセレントなアイテムだ。

改善してほしいポイント

・xドライブのシステムは、チューンがコンサバティブ。もっとリア優勢にしてくれたほうがうれしい。
・巡航時にタイヤがわずかながら発する反響音は、室内に届かないようにしてもらいたい。
・2ドア版も用意してもらいたい。その際は、ぜひ1970年代のB7ターボ・クーペの再来のようなものにしてほしい。あれはすばらしいクルマだった。


■ロードテストの記事
【詳細データテスト】アルピナB8グランクーペ 文句なしの速さ 洗練の乗り味 やんちゃさは足りない
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