株式会社リヴァ(本社:東京都豊島区、代表:伊藤 崇)が運営するWebメディア「双極はたらくラボ」は、関西大学大学院社会学研究科の松元 圭と共同で、2021年7月5日7月25日の21日間、全国の双極性障害の診断を受けている方、またはその疑いがある方に対して「双極性障害患者への新型コロナウイルスの影響に関する調査~『暮らし』と『仕事』における悩みと工夫~」のインターネット調査を実施。

490名(双極性障害の診断を受けている方469名、双極性障害の疑いがある方21名)の有効回答の集計結果を、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的とする10月10日の「世界メンタルヘルスデー」に合わせ2021年10月6日に公開しました。(調査者 双極はたらくラボ 編集長 松浦 秀俊 関西大学大学院社会学研究科 松元 圭)

※調査報告の全文は双極はたらくラボをご覧ください
https://bipolar-work.com/1253

回答者の基本属性
全回答者(490名)

診断名
双極性障害I型:39名(8.0%)/双極性障害II型:280名(57.1%)/双極性障害としか言われていない:137名(28.0%)/躁うつ病:13名(2.7%)/双極性障害の疑いあり(未診断):21名(4.3%)

年齢
10代:2名(0.4%)/20代:96名(19.6%)/30代:177名(36.1%)/40代:156名(31.8%)/50代:50名(10.2%)/60代:9名(1.8%)

性別
男性:115名(23.5%)/女性:369名(75.3%)/その他:6名(1.2%)


調査結果のトピックス

1.新型コロナウイルス流行による「双極性障害の気分の波に対する悪影響あり」約半数
回答者490名に「新型コロナウイルスの流行によって、双極性障害の中核症状である気分の波に対する悪影響があったのか」を尋ねたところ、「悪影響があった、どちらかと言えば悪影響があった」という回答が約半数(51.7%)となった。

2.新型コロナウイルス流行による「良い影響と感じることがあった」約半数
回答者490名に「新型コロナウイルスの流行で良い影響と感じることがあったのか」を尋ねたところ、「良い影響があった、どちらかと言えば良い影響があった」という回答が約半数(47.4%)となった。

3.新型コロナウイルス流行による労働環境の変化をふまえ「仕事に満足しているか」約6割
就労中の回答者258名に「新型コロナウイルスの流行による労働環境への変化」について尋ねた。
労働時間の増減については「減った、やや減った」という回答が、「増えた、やや増えた」という回答を4%ほど上回る結果となった。収入については「悪影響なし、どちらかと言えば悪影響なし」という回答が約7割という結果になった。リモートワークについての質問では「導入されなかった」(48.1%)という回答が、「導入された」(36.8%)という回答を10%程上回った。
労働に対する満足度について尋ねた質問では、約6割の回答が現在の仕事に満足しているというものだった。

参考:質問と回答結果(画像)の一部
※調査報告の全文は双極はたらくラボをご覧ください
https://bipolar-work.com/1253

全員(490名)を対象とした質問の回答結果
新型コロナウイルスへの感染状況について教えてください。
新型コロナウイルスの流行によって、双極性障害の中核症状である気分の波に対し悪影響はありましたか。
新型コロナウイルスの流行によって、双極性障害の中核症状である気分の波以外に、体調に対する悪影響はありましたか。



新型コロナウイルスの流行による悪影響を具体的に教えてください。
・悪影響に対し、あなたが行った改善策や工夫があればその内容を具体的に教えてください。



新型コロナウイルスの流行によって何か良い影響はありましたか。
・具体的にどのような良い影響があったのか教えてください。



就労者のみ(258名)を対象とした質問の回答結果
新型コロナウイルスの流行によって、あなたの職場ではリモートワークが導入されましたか。
新型コロナウイルスの流行によって、あなたの労働時間に変化はありましたか。
新型コロナウイルスの流行によって、あなたの収入に対し悪影響はありましたか。
・現在のあなたの仕事に対する満足度を教えてください。



総括(調査担当者 松浦)

今回、本調査を実施した背景の1つは私の体感にあります。双極性障害の当事者である私はコロナ禍による悪影響を受けた一方、在宅勤務によって直接人と会うことが極端に減り、結果的に体調が安定したという良い影響もあったため、他の双極性障害の方がどうなのかを知りたくなりました。

また、調査によって新型コロナウイルスによる悪影響がわかった場合でも、どんな工夫をして対処しているかを調べることで他の方の参考になるのではという考えもありました。

双極性障害の気分の波に対する悪影響あり」が約半数だった結果については、個人的には想定より少ない印象でした。

加えて、期待した悪影響への対処について具体的なものは少数であり、過去に類をみない環境変化に対して皆さんが苦慮されていることも浮き彫りになりました。

一方「良い影響と感じることがあった」という方の割合も約半数であったことから、私が感じた好影響を当事者の半数の方も同じく感じていたことは印象的でした。個別回答の「人との交流が減り、ストレスが小さくなった」からは、人からの刺激が症状に影響を受けやすい双極性障害の方の特性が緩和されたことが読み取れます。

また「うつ状態で家から出られない自分を恥じずに済むようになった」という回答からは、ネガティブに捉えていたものが社会の変化によって感じづらくなったことを良い影響と考えている方がいることも印象的でした。

働いている方に限定した質問「仕事に満足しているか」については約6割が「満足」「やや満足」と回答している点から、双極性障害と付き合いながら働く大変さはあれども、満足感を感じながら働いている方が半数以上いることも分かりました。

新型コロナウイルスの流行の結果、新しい働き方に変化し定着していく過程で双極性障害の方がどういう形態だと働きやすくなるのか、どんな工夫や対処をすればよいのかについて!今後も様々な形で調査や取材をして記事にしていければと思います。

調査担当者プロフィール:株式会社リヴァ 双極はたらくラボ 編集長 松浦 秀俊
双極性障害II型の当事者。リヴァの提供する双極性障害やうつで休職・離職している方の社会復帰サービスを2011年に利用、翌年2012年に同社入社。支援員として多くの当事者の方の社会復帰に関わった後「双極性障害で働くヒントがみつかる」をテーマとしたWebメディア『双極はたらくラボ』を2021年から開始。精神保健福祉士、公認心理師。総括(共同調査者 松元)

今回得られたデータからは、回答者の半数程度が新型コロナウイルスの流行によって、中核症状である「気分の波」に悪影響を受けているものの、中核症状以外の体調への悪影響は半数以下であることが明らかとなりました。

回答者全体の約半数が就労中であり、就労しているか否かによって影響の受け方に違いがみられるかと考え統計的検定を行いましたが、有意な差はみられませんでした。また、就労状況や性別、年齢などの基本属性による差もみられなかったため、今回の調査項目からは影響の出方の違いを生じさせる要素は見いだせませんでした。

就労中の方の回答からは、労働時間への悪影響、収入への悪影響もそれほどなかったことが明らかになりました。そのため「収入以外への悪影響」を尋ねた自由記述式の質問の回答も対象者258人中、回答者は94人と半数以下でした。しかし、記述内容に注目すると、労働時間の増加や消毒業務の追加が記述されています。この他、リモートワークによる影響など勤務形態の変化に対する記述もみられたことから、新型コロナウイルスの流行による労働形態の変化が一部の回答者にとっては悪影響となっていたことがうかがえます。

こうした悪影響に対する改善や工夫について尋ねた質問の回答からは、具体的かつ有効な改善策はあまりなかったことが示されました。しかし、新型コロナウイルスの流行をきっかけとして、休職や転職に踏み切ったとの記述が散見されたことは特筆すべき点です。

就労状況に関わらず回答者全体に新型コロナウイルスの悪影響について尋ねた質問の回答では「感染への不安」「外出自粛によるストレスの増加」といった双極性障害とは関係なく生じる悪影響が中心となって記述されていました。双極性障害との関連がみられたのは、生活リズムの変化による「躁状態の誘発」でした。オンラインでの業務や授業の増加といった社会的な変化が生活リズムに影響した結果、症状の不安定化を招いたものと考えられます。

上記で示した悪影響に対する「改善策」を尋ねた質問の回答では、具体的な解決策が複数示されました。1つめは、SNSの利用法やニュースなどの情報へのアクセスに関するもので、新型コロナウイルス関連の情報を遮断するというものでした。こうした取り組みにより不安を軽減させていたことが明らかとなりました。2つめは、家でできる楽しみをみつけることによるストレス発散や、散歩によって生活リズムを整えようとする取り組みでした。そして3つめが、オンラインで人とコミュニケーションを取ることによって他者との関係を維持し、孤立を避けようとする試みでした。こうした改善策はいずれもニューノーマルと呼ばれる生活様式にうまく対応しようとしたものであるとみることができます。

新型コロナウイルスの流行によって生じた「良い影響」に関する質問では、こうしたニューノーマルと呼ばれる生活様式がこれまでのストレスの一部を払拭したことが示されました。無理をして他者と関わる機会が減少したことや、他者の目を気にせず療養できるようになったこと、他者と比較することの減少などがその例です。こうした療養や比較に対する良い影響は、双極性障害患者特有のものである可能性が高いと思われます。

以前、筆者が実施した調査(松元 2021)でも「悪い影響」「良い影響」については同様の結果が出ていることから、一定程度の妥当性を持っているものと思われます。

こうした分析から、社会全体に対する影響は双極性障害患者も等しく被っているが、収入に関する悪影響は比較的軽微であること、中核症状への悪影響や、他者との交流の減少における良い影響などについては疾患特有の影響がみられることが明らかとなりました。しかし、新型コロナウイルスの流行は遷延化し、先行きの不透明さも拭えないことから、現時点で結論を出すことはできません。今後どのような変化があるのかを注視する必要があります。

松元圭. 2021.「新型コロナウイルス感染症双極性障害患者への影響に関する研究―社会的変化の中で症状が緩和される可能性の検討―」『日本保健医療社会学会第47回大会』
調査報告書 参考URL https://drive.google.com/file/d/1J-Hr1aZljOXGNrWZC4dj_ZTgEZ-Kt3vA/view?usp=sharing

共同調査者プロフィール:関西大学大学院社会学研究科博士課程後期課程 松元 圭
専門は医療社会学。双極性障害患者のナラティブ、「生きづらさ」とコーピング、医療的ケア児に対するHPS(Hospital Play Specialist)による「遊び」を用いた支援、などを研究している。この他、コミュニケーション論や監視社会論も関心領域である。2021年ICPSR国内統計セミナー、2021年社会調査協会S2科目講習でティーチング・アシスタント(TA)を務めた。現在は関西大学で社会調査実習、社会調査演習のTAを務める。社会学修士、専門社会調査士。

連絡先:k_papipupe@yahoo.co.jp

<双極はたらくラボについて>

双極はたらくラボは「双極性障害躁うつ病)で働くヒントがみつかる」をコンセプトとするメディアです。
双極性障害は自分ではコントロールできないほどの躁状態とうつ状態を繰り返す病気であり、それによって「継続的な就労が難しい」と感じている方が多いのが現状です。また双極性障害の方が周りの方と上手く関係を築きながら長期的に安定して働くための情報が乏しく、短期間で不本意な転職を繰り返す人も少なくありません。
双極はたらくラボは当事者の方々にとって働き続ける参考や気付きとなり、また周囲の人にも役立つ情報を提供をしていきます。
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<株式会社リヴァについて>

「自分らしく生きるためのインフラをつくる」をビジョンに掲げ、事業を展開しています。構成されるメンバーの多様性から多くの気づきが得られる「コミュニティ」と、枠にとらわれない働き方・暮らし方など多様な「選択肢」の提供により、一人でも多くの人の「自分らしい生き方」をともに探しつつ、何度でもチャレンジできる仕組みづくりを目指しています。
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引用・転載時のお願い

本リリースの内容の転載に当たりましては「双極性障害患者への新型コロナウイルスの影響に関する調査~『暮らし』と『仕事』における悩みと工夫~」(「双極はたらくラボ調べ」共同調査者 松元 圭(関西大学大学院社会学研究科))と付記のうえご使用いただきますよう、お願い申し上げます。


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