コロナ禍の影響により家計が苦しくなり、生活費だけでなく教育費の貯蓄に不安を覚える方も少なくないでしょう。国税庁が2021年9月29日に公表した「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、平均給与は年間433万円で、前年比0.8%減少。給与所得者数は男性3077万人で44万人増加したのに対し、女性は2168万人で55万人減少しました。

一方で、ソニー生命が大学生以下の子どもがいる20歳以上の男女1000名に行ったアンケート「子どもの教育資金に関する調査2021」によれば、子どもの大学等の入学金・授業料等の費用について、「費用にこだわらず子どもの希望を優先させたい(計)」と答えた人は72.4%。他の部分を節約をしても子どもの望む進学先に行かせてあげたいという声は周囲でもよく聞きます。

子どもの教育費用として、一度は学資保険を検討される方も多いでしょう。ただ最近では学資保険のデメリットもささやかれ、「何で教育費を準備したらいいの?」と悩まれる方も少なくありません。今回は教育費の準備方法についてみていきましょう。

特にお金がかかる、大学の入学や在学費用は?

子どもの教育費の中でも、特に大金となるのが大学の入学・在学費用です。それまでは日々の生活費の中から教育費を捻出していても、大学の入学金・授業料は貯蓄から払う必要があります。

まずは2020年10月30日に発表された日本政策金融公庫の「令和2年度『教育費負担の実態調査結果』」から、大学の入学金と授業料をみていきましょう。

子ども1人あたりの入学費用

大学:89万7000円

  • 私立文系:95万1000円

  • 私立理系:94万2000円

  • 公立大学:77万円

※入学費用とは、受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への入学納付金。

1年間の在学費用

大学:157万3000円

  • 私立理系:192万2000円

  • 私立文系:152万1000円

  • 公立大学:115万円

※在学費用とは、学校教育費(授業料、通学費、その他の学校教育費)と家庭教育費(塾や通信教育など補助教育費、おけいこごとにかかる費用)。

大学の入学・在学費用は、私立文系なら合計で約700万円。上記は入学しなかった学校への入学納付金や通学費なども組み込まれているのが特徴です。

大学在学中も月々の貯金やボーナスで在学費用を貯めたり、通学費は生活費から捻出したりと考えると、大学費用の半分ほどである300~350万円ほどを入学前に用意すると安心でしょう。

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利用する人が多い学資保険。メリット・デメリットは?

子どもの教育費の準備として、銀行預金のほかに利用している人が多いのが学資保険です。先程のソニー生命が行った「子どもの教育資金に関する調査2021」で、高校生以下の子どもの親(748名)に大学等への進学のための教育資金をどのように準備したか聞いたとろこ、以下のような結果になりました。

大学等への進学のための教育資金準備方法(複数回答形式)

  • 「銀行預金」(55.1%)

  • 「学資保険」(50.7%)

  • 「財形貯蓄」(10.2%)

  • 「(学資保険以外の)生命保険」(7.9%)

  • 「金融投資(株式投資や先物取引など)」(4.9%)

銀行預金と同程度で、学資保険を利用している人が多いですね。

学資保険は子どもの教育費を貯める貯蓄型の保険で、保険料の払込期間や保障、保険金の受取時期など種類はさまざま。お子さんをお持ちの方は、一度は加入を考えられた方も多いのではないでしょうか。

主なメリットは3つ。銀行預金だと「途中で使ってしまうリスク」が大きいですが、学資保険は毎月自動で積み立てられ、自由に引き出すこともできないので、無理なく確実に教育資金を貯められるでしょう。

学資保険は生命保険料控除の対象のため、年末調整で申告することで所得税や住民税が軽減されます。また、多くの場合契約者に万が一のことがあったらそれ以降の保険料の支払いが免除され、満期保険金を受け取ることができます。これは預金にはないメリットでしょう。

一方で、途中で解約した場合には、支払った金額に比べて戻ってくる金額が少なくなります。病気やケガ、また今回のようなコロナ禍といったリスクを考えると、万一のことがあっても解約しないで済むよう、教育費は貯金と同時並行で貯めたいですね。

また、返戻率が低いのもよく言われるデメリットです。返戻率は支払った保険料に対して受け取れる満期保険金の割合のことで、以前より下がっており今は高くて105~110%前後。学資保険の返戻率は基本的に保険会社にお金を置いている期間が長いほど高くなるため、加入が遅れると返戻率が低くなる傾向もあります。

そもそも学資保険に加入できるのは子どもの年齢が3歳や6歳までだったり、契約者の年齢にも制限があったりする商品も多いもの。返戻率を上げるには早めに加入したり、一括払いをしたりするといいでしょう。

教育費用は、組み合わせ技で貯めよう

学資保険のメリットやデメリットを見てきましたが、教育費は「これだけで貯めれば安心」というものはありません。それぞれにメリットやデメリットがあるので、組み合わせ技で用意するといいでしょう。

ベースとなるのは、やはりいつでも引き出せ、元本割れもしない銀行の預金です。「いつでも引き出せるメリット」を考えると、預金は塾代や入学金など比較的早く必要となる教育費に当てると考えておくといいでしょう。

低金利が気になるところですが、ネット銀行ならメガバンク地方銀行に比べて金利が高めです。都市銀行の普通預金金利は0.001%、定期預金金利は0.002%程度ですが、ネット銀行は普通用金や定期預金が0.02%程度の企業もあります。

毎月一定額が自動で積み立てられる「自動積立定期預金」を、給料日に引き落とすよう設定しておけば、自然と貯まる仕組みも作れます。

毎月貯金をするのではなく、児童手当を全額預金する方法もあります。

【児童手当】0~3歳まで1万5000円、3歳~中学生まで1万円の場合

  • 0~3歳未満:1万5000円×12カ月×3年=54万円

  • 3歳以上~中学生:1万円×12カ月×12年=144万円

54万円+144万円=198万円

児童手当を全額預金にするだけでも、高校入学前に約200万円です。これで目標額の3分の1程度になりますね。

預金で安全性を確保したら、残りは成長させる資産として他の金融商品を検討しましょう。リスクを取りたくない、万一の時の保障がほしい人は学資保険も一つ。15年以上と長期間で効率的に資金を作りたいなら、つみたてNISAを利用した投資も一つの選択肢です。

つみたてNISAは、金融庁が定めた基本的にリスクの少ない投資信託から自分で選んで毎月積み立てるもので、毎年40万円を最長20年間非課税で運用できます。通常は配当金や分配金、譲渡による利益に20.315%の税金がかかるので、はじめて投資をする方もはじめやすいでしょう。非課税運用額は最大800万円です。

もちろん投資ですので、元本割れのリスクもあります。市場が大きく下がったタイミングで現金化したくても、元本割れで現金化したくないという場合もあるでしょう。ただ、投資信託で分散して長期間運用することで、ある程度リスクは抑えられます。長期保有するほど利息に利息がつく複利の効果が得られるので、効率的にお金を増やせるでしょう。

教育費で「何を重視するか」は各家庭で異なります。それぞれのメリット・デメリットをあげた中から、ご家庭に合ったバランスを考えてみてくださいね。

参考資料