Hey! Say! JUMPのメンバーとして2007年から活躍してきた岡本圭人が、今年4月にグループの活動を終了。俳優業への専念を発表した彼が、初めてストレートプレイに出演、単独初主演に挑む。作品は、世界で高い評価を得るフロリアン・ゼレールの『Le Fils(ル・フィス)息子』。ヒュー・ジャックマン主演での映画化も話題だ。思春期の息子・ニコラと、離婚後に新しい家族と暮らす父・ピエールとの葛藤を通して、家族の愛情を描いた作品。父親役には実の父・岡本健一が出演し、親子共演も大きな見どころ。舞台は東京からスタートし、6都市を経て兵庫公演がツアーラストの地となる。

練り上げられた舞台が期待される中、東京と北九州公演を終えた岡本圭人が来阪。会見では、作品への意気込みをはじめ、父のこと、今後のことなどを語った。9歳から5年間イギリス留学、18年から2年間はアメリカ最古の名門演劇学校であるアメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツニューヨーク校に学んだ岡本。ブロードウェイを目指し、今、俳優として確実に歩み始めている。

【あらすじ】

「何かを変えたい。でも、どうしたらいいかわからない」。17歳ニコラは、両親の離婚で、家族が離れ離れになってしまったことにひどいショックを受けていた。何に対しても興味が持てず、学校をズル休みする日々を過ごすうち、退学になってしまう。父親・ピエールは新しい家族と暮らしていたが、母親・アンヌからニコラの様子がおかしいと聞き、彼を救いたいと離婚後は距離を置いていた息子と向き合おうとするが…。

ニコラを演じて】

「自分も子供の時に親から離れて1人でイギリスに留学していたことがあって、親に会いたいなとか、今後何をしていけばいいんだろうとか、悩んでいた時期がありました。そういった悩みをニコラも持っているので、すごくリンクしているなと。ニコラが言うセリフも、子供の時に自分が言っていたような言葉を言う時もあれば、自分が子供の時に言えなかった言葉を代弁してくれて言っている時もあるので。公演が終わった後に何人かに聞くと、まるで自分の子供の時を見ているようだったとか言っていただいて。毎回やってて、すごく意味のある舞台だなと思っています」

【好きなセリフは?】

ニコラが自分の本心を言うセリフで『こんな年にはなりたくなかった。自分には難しすぎる。責任とかプレッシャーとか、子供の頃の方がよかった。あと、ダンスできないし』っていう言葉とか。思ってはいたけどなかなか言えなかった言葉や、自分もダンスができなくてちょっと悔しい思いをした時もあったので、わかるなぁって思ったり。自分の父親との言い争いのシーンとかも自分には響くところがあります。自分が思っていることが親に伝わらないということも自分にはあったので、昔の感情とかも思い出しながらより言葉がリアルになるように演じています」

【お父さんとの共演は?】

「毎公演終わったら劇場から一緒に帰って、いつも一緒にご飯食べて。食べてる時に、今日のお芝居についてお互いに話し合っています。親子同士で話している時に、ニコラピエールのように互いの言うことがちょっとすれ違ってしまうこともけっこうあるので、すごいキャスティングだなって思ったりしますね」

【お父さんへの思いは?】

「父親は自分に対して友達みたいに接してくれていて、役者としては圧倒的な華があり、何よりもロックな人でかっこいい。子供の頃から父親の舞台を観ていたことが、この世界に入るきっかけでもありました。父親であると同時に、自分の尊敬する先輩でもあり、すごい役者さんだと思っています。それが今回、公演を重ねれば重ねるほど、より強く思うようになっています。なので、共演はすごく光栄なことで、うれしい。その気持ちを忘れず、今自分がいるこの素晴らしい体験を当たり前だと思わずに毎日感謝しながらやっています」

【本当の親子で親子の役を演じること】

「最初に台本を読んで『わ、これ絶対に父親とやりたい』と思って、それが叶ったあとに改めて台本読むと、言い争うシーンがあって『ちょっと待って。このセリフ、父親に言うんでしょ。うわぁ~』って思って。実生活でこのセリフを言うなんて、できないできない、絶対にできない(笑)。でも、演出家のラディスラスが親子とか関係なしに一役者として演出をしてくれたので、最初の不安は稽古が始まったらなくなりました。舞台の上ではニコラピエールとして立っているので、実際の親子関係を意識することはないです。

でも、公演を観に来てくれた人たちは、実際の親子が演じることでより舞台がリアルに見えるかと。お芝居をしているのかリアルなのか、どちらかわからなくてドキっとしたとか、逆に、だからこそ心に響いたという感想を聞くことがあって、うれしいです。実は稽古に入る前に、父親と『お芝居と現実の境界線を越えるような舞台にしたいね』と話していたので、そのように届けられてすごくよかったなと思っています」

【お父さんから贈られた言葉】

「公演初日の10分ぐらい前に楽屋に入って来て、ハグをして『これからお前の新しい旅が始まるから』って言ってくれて。それがすごく心に響いて、ちょっと泣きそうになった。『そういうのは舞台終わってから言おうよ、今はやめて』とか思って。舞台始まる前に、そういうカッコイイこと言ってくれたの覚えてますね。ほんとは『ありがとう』とか言いたかったけど、そんなの本番前に言ったら舞台終わっちゃうよって思って言えなかった」

【お客様へのメッセージ】

「実際の親子が演じるからこそ、新しいお芝居の体験をしていただけるんじゃないかなと思っています。自分たちはこの作品を通して、最近すごく話し合うようになりました。だからできれば親子で観に来ていただければと思います。親ってすごく近い存在でありつつも、近ければ近いほど言えないことがあったりするじゃないですか。そういうことをニコラは言ってくれたりする。この舞台が、親子で会話するきっかけになったり、自分の親や自分の息子との接し方などを考えていただけるようになればうれしいなと思います」

【今後目指すこと】 

「自分は世界でも活躍できるような俳優になりたいと、ずっと子供のころから思っていました。そういう世界を本当に目指すのならば、イギリス英語だけでなくアメリカ英語も学びたい、だからアメリカでまず演劇を学ぼうと思って。留学していたアメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツにはニューヨーク校とLA校があるんですが、LAの方はどちらかというとカメラ演技が多く、ニューヨーク校はブロードウェイがあるからこそ舞台演技が主でした。

僕はどうしてもブロードウェイの舞台を目指したいという思いがあったので、ニューヨークを選びました。夏休みの間には、イギリスの王立演劇学校(RADA)というところで、シェイクスピアも学びました。海外で僕が学んできたのは、セリフをどう言うかではなくて、役を生きる、その役として舞台に立つということを目標にした演技法でした。今回、東京公演でも本当にたくさんの方々が観に来てくださって、事務所の先輩や後輩も来てくれて。で、みんなが『圭人じゃなく、ニコラで舞台に立っているようだった』って言ってくれました。改めて『アメリカで演劇を学んで良かった。それが全部生きているんだ』って思いました」

STAGE

日時:10/14(木) 18:00、15(金)13:00・18:00、16(土)13:00・18:00、17(日)13:00

会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

作:フロリアン・ゼレール

翻訳:齋藤敦子

演出:ラディスラス・ショラー

出演:岡本圭人、若村麻由美、伊勢佳世、浜田信也、木山廉彬、岡本健一

料金:8500円

問:芸術文化センターチケットオフィス 電話:0798・68・0255

公式HP:https://www.lefils-theatre.jp/

取材・文=高橋晴代

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父・岡本健一、息子・圭人。実の親子で贈る日本初演の名作