人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズとの反トラスト法(独占禁止法)訴訟を巡り、米アップルは10月8日、一審判決を不服として控訴する方針を示すとともに、アプリ決済ルールの見直し命令を一時停止するよう米連邦地裁に要請した

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 米CNBC米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この異議申し立ては2021年11月までに判断される。アップルは、エピック側とアップル側双方による控訴が決着を見るまで命令の執行を止めるよう求めている。この法廷闘争は長期化するとみられており、もしこのアップルの要請が認められれば同社のアプリストア「App Store」には今後数年、大きな変化はないとCNBCなどは報じている。

一審でアップルの主張認めるも、アプリ決済見直し命令

 「App Storeによる市場独占」の認定を求めたこの裁判では、連邦地裁のイボンヌ・ゴンサレスロジャーズ判事が21年9月10日の一審判決で、エピック側の主張を認めないとした。判事はアップルが開発者に義務付けている規約の多くを容認。アップルは自社の決済システムを介して開発者から15~30%の課金手数料を徴収しているが、判事はこのビジネスモデルも認めた。

 その一方で「アプリ開発者が利用者をアプリ外決済システムに誘導すること」をアップルが禁止している行為はカリフォルニア州の不当競争法(UCL)に違反するとし、90日以内に米国全土で撤廃するよう命じた。

 アップルは今回、「期限である21年12月9日に命令を実施すれば、消費者とプラットフォーム全体に意図しない影響が及ぶ恐れがある。アップルと消費者に回復不可能な損害をもたらす」と主張し、命令停止を要求した。

エピックも控訴へ

 発端は20年8月だった。エピックはApp Storeの手数料が法外だとし、課金を回避するため独自決済システムへのリンクをアプリ内に設けた。アップルはこれが規約違反にあたるとしフォートナイトを配信停止にする措置を取った。その直後にエピックがアップルを提訴。アップルは同年9月にエピックを反訴した。

 CNBCによると、連邦地裁のロジャーズ判事は21年9月、争点となっていた10項目のうち9項目でアップルに有利な判決を下した。エピックに対しては規約違反によって生じた損害の賠償をアップルに支払うよう命じた。エピックはこれを不服として連邦控訴裁に控訴する意向を示した。

手数料減額や外部リンク容認など一定の譲歩

 米メディアによると、米IT(情報技術)大手のアプリストアを巡る不満はくすぶっている。アップルは批判をかわすため、一定の譲歩を示してきた。例えば21年1月にはApp Storeで得た年間収益が計100万ドル(1億1300万円)以下の開発者を対象に手数料を30%から15%に下げた。21年8月には、アプリ開発者らが起こしていた集団訴訟で和解すると発表。これに伴い規約を改定。開発者がアプリを通じて入手した利用者の電子メールアドレス宛てにメッセージを送り、他の決済方法を案内することを容認した。

 21年9月1日には、App Storeを調査していた日本の公正取引委員会と和解し、規約の一部を改定すると明らかにした。和解に基づき22年初頭から一部のアプリを対象に、手数料の支払いを回避しやすくする措置を取る。具体的には、アプリ内に開発者のウェブサイトへのリンクを1つ設置することを認める。開発者はこのリンクから自社サイトに利用者を誘導。これにより利用者は外部の決済サービスで支払いを済ませられるようになる。

 ただ、アップルはこれに条件を付けている。雑誌や新聞、書籍、音楽、動画といった購入済みのデジタルコンテンツやサブスクリプション(継続課金)コンテンツを閲覧・視聴するアプリのみを対象にし、App Storeに大きな収益をもたらすゲームは除外した。

 ゲームアプリの課金手数料はアップルの大きな収入源になっている。ロジャーズ判事によると、App Storeの売上高全体に占めるゲームアプリの比率は70%。アップルは、このまま命令に従えばゲームからの課金手数料収入が大幅に減ると、みているようだ。

 (参考・関連記事)「アップル対エピック訴訟、一審は双方負傷の痛み分け | JDIR

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「フォートナイト」の画面イメージ(写真:Alamy/アフロ)