少子高齢化や人口減少にともない、人材確保が困難になるなか、それに応じて多額の求人広告費をかけてしまう企業も少なくありません。昨今は採用手法が多様化しており、自社に合った方法を起用できれば、採用コストは削減できる可能性があります。そこで本記事では、経営コンサルの株式会社識学の新村恭平氏が、企業がコストパフォーマンスよく採用活動をする方法について解説します。

採用コストを増えてしまう3つの原因

採用コストが増えてしまう原因は、下記の3つです。

1.求人広告費が高い 2.早期離職率が高い 3.通年で採用活動を行なっている

ひとつずつみていきましょう。

1.求人広告費が高い

求人サイトやエージェントに募集を掲載するための求人広告費に、毎月多額のコストをかけている企業は少なくありません。求人媒体によって費用は異なりますが、どれだけコストがかかっているか把握しないまま、掲載している場合は注意が必要です。

採用活動を実施していない時期でも、掲載取り下げを忘れていると固定費がかかり続けている可能性があります。早急に確認しておきましょう。

2.早期離職率が高い

2022年に厚生労働省が発表した新規学卒就職者の離職状況によると、新規学卒者の離職状況は以下のとおりでした。

2015年に中小企業庁が発表したデータ※1では、中途採用者も就職後3年以内に約30%離職しており、現在ではさらに早期離職率が高まっていると予想されます。

早期離職率が高いと、採用活動にかけたコストが無駄になってしまい、再び人材を確保するための採用コストをかけなければなりません。早期離職者が多い場合は原因を究明し、対策を講じる必要があります。

3.通年で採用活動を行っている

長期的な人材不足により、1年を通じて採用活動を行っている企業は増加傾向にあります。転職者が増えているため、通年で採用活動を行なえば、自社が求める高いスキルを保有した人材を確保できる機会は多くなるでしょう。

しかし、長期化すればするほど求人費と採用工数が増えてしまいます。通年で採用活動を行なう場合は、採用手法の見直し・求人費削減・採用工数削減が必要です。

採用コストを削減するための具体策

採用コストが増えてしまう原因を把握したら、現状の見直しをしましょう。採用コストには社内で発生する「内部コスト」と外注で発生する「外部コスト」の2種類があります。それぞれコストの内訳を算出し、どの項目を削減できるか見極めましょう。

採用コストを削減するための方法として、以下の7つがおすすめです。従来の採用手法を見直し、採用コストをできる限り削減するための参考にしてください。

1.SNSの活用

SNSを活用したソーシャルリクルーティングで、採用コスト削減が期待できます。

ソーシャルリクルーティングとは、求人媒体経由ではなく、Twitter・Instagram・LinkedInなどのSNSを活用して、ダイレクトに採用活動を行なう方法です。求人に関する投稿を掲載したり、候補者と直接DMでやりとりしたりすることで、求人広告費を抑えながら、自社が求める人材にアプローチできます。

実際にソーシャルリクルーティングを行なっている企業では、リクルーティング用アカウントを作成しているケースもあり、現在注目されている採用手法の一つです。

2.オンラインツールの導入

オンラインツールを導入することで、採用工数の削減、会場費や交通費などの内部コストの削減が可能となります。コロナ禍でオンライン会議ツールや録画面接を導入する企業が増えており、採用コストを削減するための方法としても活用されています。

また、会社側のメリットだけではなく、求職者が応募しやすくなったり、面接辞退者も削減できたりといったメリットも期待できるでしょう。

3.社員紹介制度の導入

求人媒体に頼らず、自社の社員に協力してもらうことで採用コストを削減可能です。

たとえば、社員の知人や人脈を通じて人材を確保するリファラル採用があります。リファラル採用を導入すれば、候補者を採用した際に支払う社員へのインセンティブのみに採用コストを抑えられ、求人広告費のような固定費はかかりません。

4.自社HPの活用

自社HPで求人を掲載すれば、採用コストを削減できるだけではなく、求職者に直接自社の魅力を伝えられます。また、求人媒体に頼ることなく、直接求職者とコミュニケーションが取れるため、効率的に採用の確度を高めることも期待できます。もちろん、自社HPの求人を見てもらうためには、まずは認知度を高めなければなりません。求人情報のほかに、有益な情報をコンテンツとして発信できればアクセス数を増やせます。

しかし、コンテンツ作成には時間がかかるため、まずは無料で掲載できる求人媒体やSNSとの併用がおすすめです。

5.ハローワークに求人掲載

ハローワークへの求人掲載には費用がかからないため、コストダウンに有効です。また、ハローワークに求人掲載することで以下のメリットが得られます。

ハローワークを利用するすべての求職者にアプローチできる ・ハローワークの職員が、自社に合いそうな求職者に対して求人を直接紹介してもらえる

自社が求める人材に対して細かいターゲティングはできませんが、無料で活用できるため、ほかの採用手法と併用してみても良いでしょう。

6.トライアル採用

トライアル採用とは、国・自治体の助成金を活用して、一定期間求職者を試用雇用できる仕組みです。ハローワークや職業紹介・人材派遣業者からの紹介により、コストをかけずに適性を見極められます。

導入するには一定の条件がありますが、求人媒体を利用する必要がなく、離職によるリスクも回避できるため、ぜひ検討してみてください。

トライアル採用の諸条件については、厚生労働省※2が公表しています。具体的に検討を進める際にはご覧ください。

7.アウトソーシングの活用

アウトソーシングとは、自社の業務を一部外部に委託することです。アウトソーシングを活用すれば、社内のリソースが不足した場合でも採用活動による人材確保の必要がないため、採用コストを削減できます。人件費や福利厚生、固定費、保険負担料も抑えられるため、長期的なメリットも得られます。

また、外部委託先の業者や人材は、高い専門知識を持っている場合も多く、人材を雇い入れるよりも効率的に業務を遂行したり、アドバイスを得たりすることが可能です。

コスト削減だけでなく費用対効果も意識しよう

採用コストを削減できれば、採用活動を積極的に進めやすくなります。しかし、コスト削減だけに注力するあまり、自社が求める優秀な人材からの応募が減ってしまう可能性も否定できません。

採用コストの削減だけを考えるのではなく、採用活動における費用対効果への意識が重要です。1人あたりの採用コストを算出して費用対効果を高めれば、より効率的な採用活動を推し進められます。

まとめ

採用コストの増加は、企業の積極的な採用活動の足かせとなります。採用コストをできる限り削減し、費用対効果を高めれば、効率的に自社が求める優秀な人材の確保が可能です。

まずは採用コストの内訳を算出し、削減できる項目から着手しましょう。現在の採用手法のほかに、SNSや自社HPの活用、ハローワークへの求人掲載などの手段を検討してみてください。場合によっては、人材を採用するよりアウトソーシングを活用した方が、自社にとっては大きなメリットが得られる可能性があります。効率的な採用活動を進めるために、ぜひこの本記事を参考にしてみてください。

<参考>

※1:中小企業庁 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍

※2:厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

株式会社識学

(※画像はイメージです/PIXTA)