近年、サービス終了を迎えたスマートフォン向けゲームが、通信・課金なしで遊べるオフライン版へと転身するケースが相次いで見られるようになってきた。

 元々、そのようなゲームのサービス終了というのは、ゲーム本体のダウンロード、プレイが不可能になることを意味していた。それと同時にそのゲームが今まで存在した証も無くなって、後世にプレイすることも困難を極めるようになってしまう……。

 歴史の視点から考えれば、それはあまりにもゲーム自体にとって残酷な話だった。

 しかし、昨今は前述のオフライン版への転身という施策を取るゲームが現れ始めたことで、サービス終了の持つ意味も変わってきた。

 そして、有料の買い切り型アプリに転身し、スマートフォンに限らず、パソコンや家庭用ゲーム機への進出を図るタイトルもいくつか登場している。
 今回取り上げるロックマンX DiVE オフラインもそのひとつだ。

 元のロックマンX DiVEは2020年3月より、スマートフォン向けの基本無料ゲームアプリとして東アジア圏先行で運営を開始。日本ではそれから約半年以上が経過した、同年10月26日より運営が開始された。それから2年半近くが経った2023年6月、サービス終了が告知。同年9月27日13時をもって、幕を下ろすことになった。

 だが、その発表から間もなく開催されたデジタルイベント「カプコンショーケース 2023.6.13」で、今回の『ロックマンX DiVE オフライン』が電撃発表。通信・課金要素を廃した買い切り型のゲームアプリへと転身し、スマートフォン(iOS、Android)のほかパソコン(Steam)向けにも展開されることになった。

 サービス終了の報せから間もないオフライン版の登場には、同アプリを日々遊んでいたプレイヤーこと”プレーヤ”の方々もさぞ驚いたと思われる。かくいう筆者も「そういうのもあるのか!」と、寝耳に水な展開にビックリ困惑となった次第である。

 そもそも、『ロックマン』シリーズのソーシャルゲームといえば、過去にロックマンXover(クロスオーバー)』なるタイトルがあった。同作は2015年のサービス終了とともにダウンロード、プレイもできなくなった。そのことから、『ロックマンX DiVE』も同じ流れを辿るものだと思っていたのだ。それがオフライン版になって残ることになろうとは、誰が予想できただろう。

 しかも、オフライン版はスマートフォンに限らず、パソコンにも展開される。
 これすなわち、パソコンであればロックマン クラシックス コレクション』をはじめ、現行機で遊べる『ロックマン』シリーズのコレクションタイトル(+完全新作ロックマン11 運命の歯車!!)とSteamのライブラリ上で一緒に並べられるということでもある!

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▲さっそく並べてみました。

 そんなパソコン版をこのたび、先行してプレイできる機会に恵まれた。スマートフォン版でも自由に配置を変更可能な仮想ゲームパッド、そしてDUALSHOCK 4を始めとするゲームパッドへの対応など、操作周りへの配慮が光っていた『ロックマンX DiVE』。それらがパソコン版ではどうなっているのか。そして、オフラインになったことによるゲーム本編の変化とは?

 見出しに書いているとおりだが、結果的に本作は『ロックマンX』シリーズどころか、ロックマン』全シリーズで見ても随一のボリュームと“チカラを求める欲”を刺激するシングルプレイ専用アクションRPGとなっている。
 その見所と実際に遊んだレポートを綴っていこう。

文/シェループ

『ロックマンX DiVE オフライン』公式サイトはこちら

スピンオフ作品として誕生した、オンライン版『ロックマンX DiVE』

 オフライン版の話に入る前に、9月末のサービス終了が告知されているオンライン版の『ロックマンX DiVE』の紹介を。

 『ロックマンX DiVE』は、1993年スーパーファミコンで発売されたアクションゲームロックマンの派生作、ロックマンX(エックス)』の完全新作である。

 シリーズとしては復刻タイトルだが、2018年発売のロックマンX アニバーサリーコレクション1+2』以来2年ぶり、完全新作としては2005年にPlayStation Portable向けに発売されたイレギュラーハンターX以来、15年ぶりとなる作品だ。

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 厳密にはスピンオフ作品で、シリーズ直接の続編ではない。ストーリーも『ロックマンX』シリーズをはじめ、さまざまなゲームのデータ、思い出などが保存された電脳世界「ディープログ」で発生したバグを主人公であるプレイヤー本人(以下、プレーヤ)と、ディープログの管理人オペレーターの「リコ」とともに修正していく、オリジナルの内容になっている。

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 ゲームジャンルもアクションRPGで、本家『ロックマンX』とは大きく異なる。一応、本編はステージクリア形式で進行するが、『ロックマンX』や他のアクション系の『ロックマン』シリーズでお馴染みのステージセレクトはない。決められた順序に沿ってステージを攻略していく、伝統的な横スクロールアクションゲームの構成となっている。

 ステージも1つ当たり6つのコースに小分けされていて、そのクリア条件も『ロックマンX』お馴染みのボスの撃破に限らず、ゴールや目的地への到達といったものを用意。そのため、これまでのアクション系の『ロックマン』シリーズとは趣の異なるゲームデザインとなっている。

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 システム面もアクション周りはダッシュ、壁蹴りといった『ロックマンX』お馴染みのものを網羅。さらにロックマンX5で初登場したしゃがみロックマンX7の敵に狙いを定める「ロックオン」も用意。ロックマンX4以降、プレイアブルキャラクターへと昇格した「ゼロ」専用のアクションだった「二段ジャンプ」も、本作では全キャラクター共通のアクションにされている。

 また、RPGということでレベルの概念が存在。ステージをクリアするたびに経験値が入り、一定量に達するとレベルアップしてプレーヤ自身の「戦闘力」が強化される。

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 本作でプレーヤが操作するのは「ハンタープログラム」と称された『ロックマンX』シリーズを始めとする『ロックマン』シリーズに登場したキャラクターたち。彼らには「ランク」「スキル」など複数のステータスが設定されており、それぞれに経験値を付与するアイテム「強化素材」を使うことで底上げを図れるようになっている。

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 キャラクター以外にも武器、アーマーなどがあり、これらも「強化素材」を使うことで強化が可能。ちなみに「強化素材」はステージクリアのほか、ショップでの購入を通して入手する形となる。後者の場合は通貨「ゼニー」や「エレメタル」と呼ばれる虹色に輝く金属による支払いが必須だ。

 上記のほかに本編にはプレーヤとリコのバグ修正の戦いを描いた「ストーリー」のほか、階層ごとのチャレンジに挑む「ヤコブ」、期間限定のステージが遊べる「イベント」などを収録。フレンドと協力してステージ攻略に挑んだり、直接対決に挑む「対戦」といったオンライン要素も用意されている。そして、スマートフォン向けゲームアプリ……ソーシャルゲームということで、プレイ可能な範囲は「スタミナ」によって制限。「ハンタープログラム」をはじめとするキャラクターたちなども「ダイヴカプセル」と称されたガチャを回して入手、毎日ログインするたびにボーナスが得られるといった定番の要素も網羅されている。

 ややかいつまんだ形になったが、以上がオンライン版の大体の概略である。
 オフライン版も基本的にはこの内容を踏襲している。

 ただし、オフライン化に伴い、いくつかの要素やゲームバランス周りに変更と調整がかかっている。

基本の内容はそのままに、買い切り型ならではの変更と再調整が図られたオフライン版

 まずオフライン版では「スタミナ」が廃止。制限なくゲーム本編が遊べるようになった。

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 「ダイヴカプセル」(ガチャ)も廃止。キャラクターはショップで販売されている「断片」の購入、もしくはステージをクリアして集めて手に入れる形になった。これに並行してステージ初回攻略時などで得られる「ゼニー」を始めとする報酬も上方修正。「イベント」に設けられた稼ぎ特化の専用ステージも無制限に遊べるよう改められている。ちなみにゼニーに限らず、強化素材稼ぎのイベントも同様に上方修正されている。

 強化素材もオンライン版には様々な種類が存在したが、オフライン版では一部を廃止。それによって総数が減ったほか、必要な素材なども見直されて強化しやすくなっている。本編に登場するキャラクター、武器なども基本的に本編をプレイすればすべて入手可能。追加課金はいっさい発生しない。

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 そして、オフラインなので協力プレイ、対戦などはなくなり、シングルプレイ専用のゲームになった。これ自体は本家『ロックマンX』に原点回帰したような感じだ。

 とは言え、ゲームシステムを始めとする基本の作りはオンライン版と同様。本家とは異なるアクションRPGであるということはなんら変わりない。また、対戦には一部、専用のスキルが存在したが、これらもシングルプレイ用に一新および上方修正がかけられている。

 アクション全般の操作感、仕組みもオンライン版を踏襲している。基本的に対応するボタンを1回押せば、そこにセットされている武器や「スキル」が発動されるという仕組みである。従来の『ロックマンX』とは少しばかり異なる。

 パソコン版はユーザーインターフェース(UI)も気になる所だが、これに関してはスマートフォン版タップ操作をほぼ忠実に踏襲。

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 仮想カーソルを操作し、各種UIに重ねて決定するものになっている。いわゆるデジタル操作……カーソルを方向キーおよびコントロールスティックで動かし、各種UIを選択する本家『ロックマンX』みたいなものではない。
 ただ、仮想カーソルマウスでも動かせる。なので、ゲームパッドのコントロールスティックで動かすのがわずらわしい場合は、マウスとの併用がおススメだ。

 上記のほかに『ロックマン』シリーズとのコラボイベントはすべて収録。逆に『モンスターハンター』、『ストリートファイター』といった他のカプコンタイトルとのコラボ要素は収録されていないものの、本編「ストーリー」にはオンライン版の一部イベントステージを新規に追加。メインメニューのUIを一新といった改良も図られている。

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▲オートセーブ1つ+マニュアルセーブ5つが作成可能。

 細かいところでも、オフライン版では複数のセーブデータ作成が可能に。逆にセーブがローカルのストレージ上に保存される仕様になり、一部アイテム廃止などの変更・再調整もあることから、サーバーを介していたオンライン版のセーブデータを引き継ぐことはできなくなっている。

 さらにゲーム中に流れる音楽、ボイスを自由に聴ける「BGM&シナリオボイス鑑賞」もメインメニュー内に設けられた。

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 音楽はオンライン版もそうだが、基本的に過去の『ロックマンX』シリーズ(一部他の『ロックマン』シリーズ)の原曲を流用している。ただ、「ヤコブ」を始め、本作オリジナルアレンジの楽曲もあるため、そうした楽曲をじっくり聴きたいプレーヤ(およびシリーズファン)には嬉しい追加要素と言えるだろう。

 ボイスもリコ役の上田麗奈氏、ヴィア役の武内駿輔氏らによる台詞が聴き放題なので、声優ファンにもたまらない……はず。ただし『ロックマンX』を始め、『ロックマン』シリーズのキャラクターたちのボイスを聴くことはできない。

オフラインへの転身で、力を求める欲を刺激する大ボリュームのアクションRPGに……?

 そんな具合にオンライン版からいろいろ手が加わって、完全なシングルプレイ専用のアクションRPGになった本作。

 結果、どうなったのかと言えば、『ロックマンX』シリーズはおろか、『ロックマン』全シリーズで見ても随一のボリュームを誇る作品になった。

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 メインストーリーだけでも、ステージごとに用意されたコース総数は120以上。メインストーリーの高難度版たる「挑戦」、イベントステージ、ヤコブ、といったチャレンジ系のステージも足せば膨大な数になる。加えて、「ハンタープログラム」のキャラクターたちに武器などのアイテム収集といったやり込み要素も用意されている。

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 これらすべてをやり通すとなれば、いったいどれぐらいの時間を要することになるのか……。考えるだけでも恐ろしい。そんなある種、容易にやり尽くせない規模のコンテンツが収録されているだけでも、『ロックマンX』シリーズに限らず『ロックマン』全シリーズのなかでも屈指のボリュームを誇る作品と言っても大げさではないだろう。ましてや、シングルプレイ専用の『ロックマン』作品のなかでは、明らかに3本の指に入る気がしてならない。

 ちなみにメインストーリーをすべて終えるのに筆者が要したのは20時間ほどだった。『ロックマンX』シリーズで、ストーリークリアに20時間近くを要した作品と言えば、個人的に外伝でRPGのロックマンX コマンドミッションが記憶に残っている。本作はアクションRPGということで趣はまるで異なるが、それに比較的近い物量を味わえるという点では注目に値するだろう。

 遊び方次第では、時間が膨れ上がりかねない仕掛けがあるのも見所。それがステージクリア時に得られる強化素材、ゼニーといった報酬の上方修正である。これによって、稼ぎ欲が刺激されれば、止められなくなるほどのリプレイが備わった。

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 とりわけ制限が無くなった稼ぎ特化型のイベントステージは、上方修正の影響から欲を刺激されやすい。なるべく戦闘力を上げられるだけ上げ、その圧倒的な力を振るってステージを攻略していく方針を立て、メインストーリーを進めようとすれば余計に時間を吸い取られるのではないだろうか。

 実際、筆者もその方針で進めようとした結果、稼ぎに勢いがついてズルズル時間を吸われ、総プレイ時間が一気に増えていたことがあったぐらいである。どこかのレジスタンスの司令官みたく、「モット チカラヲォォォ!」と勢いづいていたら、延々と稼いでは強化し続けていたのではないだろうか。

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▲力を求め続けた、とあるレジスタンスの司令官近影。

 実際、戦闘力を過剰に高めれば、ワンパンチ(ワンパン)で雑魚敵からボスまで蹂躙しながらの攻略ができてしまうだけに尚更である。最終的にはそのまま『ロックマンX』シリーズの主人公をも……いや、これ以上は考えないでおこう。明るくない未来が見えた。

 それに紹介が遅れたが、本作はスタミナ廃止に伴い、オンライン版にあった「スキップダイヴ」も省かれている。★3つの評価を獲得したコースであれば、スタミナを消費する形で即時周回ができるという便利機能だ。それがないため、強化素材から断片、ゼニーを稼ぎたくば、必然的に自力での周回が余儀なくされるので、ズルズルと時間が増える。

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 これ自体は返って作業感を高めると同時に、プレイ時間の水増しに直結しているのも否定できない。特に「BOSSチップ」なる装備の強化素材は、イベント側に専用の稼ぎステージがないのもあって煩わしさが出てしまっている。ただ、上方修正によって徒労に終わることは抑えられており、結果的に稼ぎプレイの楽しさとリプレイ性の向上に繋がっている。

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 そんな力という名の高い戦闘力を求めようとすれば、没頭するほど遊び込んでしまう魅力が高まっているのは、まさにこのオフライン版ならではの魅力だろう。その点から見れば、本作は『ロックマン』全シリーズのなかでも随一のリプレイ性を誇る作品にもなった……と言えるかもしれない。
 だが、繰り返しになれば力を求めすぎれば、時間が代償として吸われ続ける。やりすぎはホドホドに。

 それにしても筆者自身、これまでにも電ファミニコゲーマーでは時間を吸われる類のゲームの先行プレイレポート記事をいくつか書いてきたが、まさかそこに『ロックマン』の新作が名を連ねようとは。(独り言