みなさんは、普段「日本酒」を飲みますか?実際、そう問われると「あまり…」という反応の人も多いのではないでしょうか。

現に、日本酒の国内出荷量は減少の一途を辿っています。日本酒造組合中央会調べの情報を掲載した農林水産省の情報によると、少なくとも平成10年から減り続けており、現在では半数以下の数になってしまったようです。

日本ではこのような状況ですが、実は現在海外では人気があります。では、いったいどのように人気があるのか、海外取材の多い筆者が見た海外の事例で紹介します。

日本酒の輸出量・金額は右肩上がり

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そもそも、海外で「日本酒」が人気という話は、本当なのでしょうか。

データ的に言えば、人気かどうかは別として、人気が高まっている点は間違いがありません。

その理由として、日本酒輸出量の変化が挙げられます。冒頭で、日本酒の国内出荷量は右肩下がりになっていると紹介しましたが、一方で日本酒の輸出量・輸出金金額は、一時の例外を除いて右肩上がりを続けています。

令和4年は約3万6000キロリットル日本酒が輸出された結果、輸出金額は475億円に達し、いずれも過去最高を記録しています。

主な輸出先を輸出量で見ると、令和4年の場合、アメリカ・中国・韓国・台湾・香港の順で多いです。次いで、イギリスを含むEU全体・カナダシンガポールオーストラリアベトナム・タイ・ドイツといった感じ。

昨年比の輸出量の伸び率で言えば、 ベトナム211.6%、マレーシアが174.0%、タイが149.3%と急拡大しています。もちろん、それら東南アジアの国々は、輸出額も同じくらい急拡大しています。

実際現地の人たちに人気があるのかどうかは別として、需要が急拡大している点は、間違いなさそうですね。

カナダ・トロントで「Ginjo」と親しまれる「大吟醸酒」

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では、現地の日本酒に対する反応はどのような感じなのか、筆者の取材先での経験などを紹介します。

コロナ禍の直前に出かけたカナダトロントでは、ファッショナブルな日本食レストランに行くと、日本酒セラーが置いてあり、新潟の銘柄の日本酒を中心に、大吟醸酒や吟醸酒、純米吟醸酒など、日本酒の中でも上質な日本酒がラインアップとして並んでいました。

メニュー表にも、Ginjo」などの言葉が並び、「Ginjo」とは何かと日本酒担当の現地人ソムリエに聞くと、酒米の表面を普通酒以上に削り、醸造アルコールを入れて、爽快でフルーティーな味わいの日本酒であると教えてくれました。

日本酒に知識のある人であれば、納得のいく説明ではないでしょうか。

その吟醸酒を、ワイングラスに入れて楽しませてくれます。相手(筆者)が日本人であるため、勝手に詳しいと思い込んだようで、ローカルな酒蔵の日本酒もテイスティングさせてくれました。

日本人からすると、”フランス人はワインに詳しいだろう”という勝手なイメージと似ていますね。

そのたび『どう感じるか?』との質問があり、日本の日本酒と比べて酸味が強い、などと思ったままを答えると、ワインの影響を受けた人たちがワインを飲む人を想定してつくっているため酸味を意識しているといった回答がありました。

いずれにせよ、日本酒を学ぼうとする人の熱を感じました。

オーストラリアでは「梅酒(Umeshu)」を発見

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コロナ禍後のオーストラリア取材で、ゴールドコーストとブリスベンを訪れた時にも、日本酒の熱を感じました。

一緒に各地を旅して周った各国のジャーナリストの中には、ドイツ人、インド人、オーストラリア人、イギリス人、アメリカ人がいました。

アメリカのアトランタ州に暮らすアメリカ人の女性は『私の舌はお子ちゃまだから』と、日本酒はおろか、ビールもワインも飲まない、コカ・コーラだけと笑っていました。

ですが、イギリス人、オーストラリア人の女性ジャーナリストたちは、日本酒はもちろん、日本酒でつくった「Umeshu」の存在を知っている人など、日本酒にかなり高い関心を持っていました。

日本食レストランは当たり前ですが、ブリスベンのような都会では、美術館など公的な施設に入るレストランのドリンクメニューに「sake」を見かけました。

聞けば、「sake」は吟醸酒を指し、ワイングラスに入って出てくるのだそう。

日本でも、元サッカー選手などの尽力により、ワイングラスに入れて飲むことが当たり前になりつつありますが、海外でもフルーティーな吟醸酒・大吟醸酒をワイングラスで楽しむのがメジャーになってきたようです。