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 過去40年にわたり気候変動の影響で最悪の干ばつに見舞われているケニアは、自然や生物多様性の損失のみならず経済的損失にも苦しんでいる。

 そこでケニア政府は、国民が力を合わせて豊かな自然環境を取り戻すため、特別休日「植樹の日」を設けた。

 この日、1億本の苗木を植える目標に向けて、ケニア国民1人が少なくとも2本の苗木を植えることが奨励され、多くの国民が参加した。

【画像】 10年間で150億本の木を植えるため、植樹休日が設けられる

Kenya: government declares public holiday to plant trees

 ケニアでは最も壊滅的な干ばつによって、これまでに250万頭の家畜が失われ、400万人が被害にあい、GDP(国内総生産)の3~5%の社会経済的損失が記録されている。

 また違法の森林伐採も深刻な問題だ。

 去年末から、環境省ではこれらの問題への改善に取り組むため、2032年までに同国の樹木被覆率を30%に引き上げるための全国植樹キャンペーンを開始した。

 このキャンペーンは、2032年までの10年間で150億本の植樹を目標としている。

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 政府はケニアに住む国民1人につき年間30本の木を植えることを推奨している。10年間で1人当たり300本の木を植える計算となる。

 ソイパン・トゥヤ環境相は、このキャンペーンの一環として、国民に1億本の木を植えるための特別休暇を与え、11月13日(月)を休日とすることを発表した。

 この植樹の日に、国民は自主的に植樹活動を行い、少なくとも2本の苗木を植えることが奨励されていて、最終的には1億本の目標達成につなげる予定だという。

 木は大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を大気中に放出することで地球温暖化防止に貢献する。

 政府は約1億5000万本の苗木を公共の苗床で利用できるようにしていて、国民が指定された公共の場所に植えられるよう、森林管理センターで苗木を無料で提供している。

多くの国民が植樹活動に参加

 このプログラムは全国47の郡すべてで実施される。

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 コミュニティ・グループ、NGO、学校、教会、農民など、すべての利害関係者が木の苗床を育てたり、自分の屋敷や森に木を植えたりすることで、積極的にキャンペーンに参加するよう呼びかけられている。

 初日となる月曜日、公務員や学生、家族連れが首都ナイロビの様々な場所に集まり、植樹を行った。

 植樹活動に参加した人の中には、環境に対して懸念を示し、愛情をもって植林する人もいたようだ。

 しかし、都市部に住む人々はこのプログラムに参加する可能性が低く、臨時の休暇として利用するだけではないかと心配する声もある。

 環境省によると、この活動はインターネットのアプリを通じて行われる。このアプリは、人々にとって各植林地に合った樹種の照合や、適切な植え方の手助けになるだけでなく、植えた木の種類、本数、植樹日のほか、成長の監視といった活動記録の役目も果たす。

 トゥヤ環境相は地元メディアに「反響は驚くべきもので、11月12日までにすでに200万件のアプリ登録があった」と語った。

 植樹活動に参加した政府高官のジョアンキリカ氏は、次のように述べた。

私は今日50本の木を植えました。

特に数シーズン連続で劇的な干ばつを経験した後では、これは地球にとって力強く必要な取り組みだと思います。

必ずしも祝日としてではなく、環境を大切にし、地球について考えることを毎年思い起こさせる日として、毎年この日を祝い続けることを願っています。

Kenya surpasses effort to plant 150 million trees

大統領の伐採再開の発表に批判の声も

 ケニアでは現在、エルニーニョ現象による大雨に見舞われており、数十人が死亡、数千人が避難し、インフラが損壊している。

 植林活動は洪水のあった北東部では行われない予定だが、ウィリアム・ルト大統領は東部のマクエニでの植林活動を指揮するために現地に出向いた。

 他の地域には閣僚が派遣され、県知事やその他の役人とともに作業を指揮した。

 同大統領は気候変動に関心があると主張し、この植樹キャンペーンを率先している形だが、7月に5年間禁止していた伐採を再開すると発表して環境保護団体の怒りを買っている。

 当時、同大統領は「伐採再開は雇用の創出と林産物に依存する経済部門の発展を目的としたもので、国が植林・管理する森林の成熟した木のみを対象としている」と主張していた。

 先月、ケニアの裁判所はこの伐採禁止の決定を保留したが、大統領は5000ヘクタール東京ドーム1070個分)の成木の伐採を許可した。

 公式統計によると、林業は昨年のケニアのGDP(国内総生産)に1.6%貢献しており、また森林は現在国土の8.8%を占めているという。

 失業とインフレに見舞われているこの東アフリカの国では、政府の統計によると木材産業は直接雇用が約5万人、間接雇用が30万人という状況だそうだ。

 環境保護活動家のテレサムトーニさんは、「この取り組みは非常に良いアイデアだが、国民全員が確実に植樹できるような形で実施されていない」と語っている。

多くの人々は、食卓に食べ物を並べるために(伐採などの)仕事を続けなければならなりません。

また、公共の苗床にある1億5000万本の木の多くは外来種です。適切な場所に適切な木を植えることが、非常に重要なのです。

 植林を支持する一方で、公有林での違法伐採を取り締まることに失敗している政府は植樹休暇決定を擁護し、影響を受けるのは商業目的の森林だけで、全体の約5%だと述べた。

これは地元の需要を満たし、雇用を創出するために必要なことであり、政府は他の森林の違法伐採者に対して行動を起こしています。

この運動は特別休暇後も続けられ、12月の雨季が終わるまでに5億本が植林されるでしょう。
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pixabay

過去にも実施されていた植樹キャンペーン

 実はケニアは、以前も学校や大学、教育センター、農地、乾燥地での植樹に焦点を当てた「緑化ケニア・キャンペーン」に着手していた。

 2018年末に始まったこのキャンペーンの目標は、2022年までに18億本の植樹を行い、森林被覆率10%以上を達成するというものだった。

 同国の森林は近年大幅に減少しているため、政府は国民に人為的な二酸化炭素排出による自然環境破壊という問題に取り組むよう、森林伐採の一時停止を呼びかけたわけだが、気候変動の現実に対する国の野心と行動のギャップが拡大しているようだ。

References:Kenya: government declares public holiday to plant trees/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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目標1億本。ケニアで新たな休日「植樹の日」が設けられ、国民が一丸となって苗木を植える