「#メタバースくそくらえ」。昨年4月に出されたこの声明文は、あまりに赤裸々な内容で業界をざわつかせた。本来はワクワクする未来として位置づけられていたメタバースの時代が到来したにもかかわらず、「メタバース」が“お金集めのための空虚な言葉”としてひとり歩きしている実態があったからだ。

そんななかで、MyDearestのCEO・岸上健人氏の「お金儲けのためだけに人が集まり続けるはずないだろ!」という意見はあまりに痛快だった。『TOKYO CHRONOS』ALTDEUS: Beyond Chronosなど、黎明期からVRゲームを作り続けている岸上氏は、「メタバース」のネガティブイメージに誰よりも苦悩し、戦っていたのかもしれない。「『面白いゲーム』をつくることこそが、メタバースの未来を切り拓くと、私たちは信じています」とプレスリリースを締めくくった彼は、いま何を考えているのか…。

そもそもエンタメとは何なのか、真剣に考えたいという思いから始まったこの連載「エンタ飯!〜うまい飯といい話〜」は、イザナギゲームズのCEO・梅田慎介氏が聞き手を務め、エンタメ業界の最前線で戦うトップランナーたちと美味しい料理をご一緒しながら、彼らが考えるクリエイティブの真髄に迫っていく。

第4回目のゲスト・岸上氏とは本日発売のSwitch『DYSCHRONIA: Chronos Alternateを共同開発してきた。さらに『ALTDEUS』のSwitch化、『TOKYO CHRONOS』の朗読劇化など、共同のプロジェクトも目下進行中だ。

Switch版『ディスクロニア』を発売した梅田慎介がプロデューサー・岸上健人に聞く「#メタバースくそくらえ」の真相_001

[今回のスゴい対談相手]岸上健人

MyDearest株式会社CEO。1991年生まれ、徳島県出身。慶應義塾大学卒業後、ソフトバンク株式会社を経て、2016年4月にCOOの千田翔太郎、CCOの郡陽介と共にMyDearest株式会社を創業。プロデューサーとしてVRゲームをはじめとしたコンテンツを制作。主な作品に『TOKYO CHRONOS』『ALTDEUS: Beyond Chronos』『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』などがある。

「くそくらえ」の語気からは想像ができないほど柔和な岸上氏を迎えたのは、東陽町の「鶏×びすとろCOQUERICOコクリコ)」。ふたりの出会いから『DYSCHRONIA』の制作に至る秘話はもちろん、岸上氏がVR業界を目指したきっかけ、「#メタバースくそくらえ」の真相やVRゲームの課題、生成AIの活用など、ほろ酔い談義での話題は多岐にわたった。

聞き手/梅田慎介
取材・文/山崎ヒロト

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[今回のウマいお店]鶏×びすとろCOQUERICOコクリコ

住所:〒135-0016 東京都江東区東陽3-17-13 プラティーク東陽町1F
TEL:03-6458-6733
MAIL:info@coquerico.jp
https://www.coquerico.jp
営業時間:17:30~24:00(金曜・土曜は25:00)
定休日:月曜(祝日や祝前日の場合は営業)


『DYSCHRONIA』VR版とSwitch版の同時開発は業界初の試み

梅田:
岸上さんとは2年ぐらい仕事を一緒にしていますよね。『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』のプロジェクトは、VRとNintendo Switchの両方のバージョンを開発することが最初から決まっているっていう面白いプロジェクトでしたよね。

岸上:
VR版とSwitch版を同時に作るのって、たぶん業界で初ですよね? 周囲からもすごくチャレンジングだと言われました。

梅田:
ウチが既存のVR版をSwitch化するのではなく、最初のシナリオから一緒に開発する形ですよね。そしてビジネス的には…簡単に言うと、リスクとリターンを折半でやっているんですよね。VR版が売れたらウチも儲かるし、Switch版が売れたMyDearestさんも儲かる仕組みで。

岸上:
これはかつてない作り方だったと思います。

梅田:
そもそもの話をすると、僕は岸上さんたちが作った『TOKYO CHRONOS』【※】と『ALTDEUS: Beyond Chronos』をプレイしていたんですけど、VRゲームとしてのみならずアドベンチャーゲームとしてもよく出来ていて、岸上さんに興味あったんですけどSNSとかを拝見していると岸上さんが面白そうな人だなと思いまして(笑)。

※2019年発売のVRミステリーアドベンチャーゲーム。監督を柏倉晴樹、プロデューサーを三木一馬、キャラクターデザインをLAMが担当した。

岸上:
ありがとうございます(笑)。

梅田:
この人は急にDMをしても怒らないだろう、と。それに甘えてDMをして、すぐにお会いしましたね。

岸上:
いや、ビックリしましたよ。僕は梅田さんたちが作った『Death Come True』をいちファンとしてプレイしていましたから、いつかお話ししてみたいと思っていましたけど、まさか連絡をもらえるとは。

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11月22日に発売されたシネマティック捜査アドベンチャーゲーム『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』のNintendo Switch版。先行して発売されていたVR版の3エピソードにSwitch限定シナリオを収録している。

梅田:
そんな初対面を経て、一緒に作った『DYSCHRONIA』のSwitch版がようやく発売されます。ゲームを作っていると大変なことがあるんですけど、岸上さんとは気が合って、お互いの信頼関係だけで乗り越えてきた部分もありましたよね?

岸上:
そうですね。普段からよく話して、コミュニケーションをとっていました。

梅田:
岸上さんは31歳なので僕はだいぶ上の世代ですけど、岸上さんのパワーと人柄をとってもリスペクトしているんです。岸上さんには言ったことがあるんですけど、こんなにジャンプの主人公感がある人はいないな、と。かなりツラい状況でも笑顔でいれる…マジでルフィみたいな人じゃないですか(笑)。

岸上:
どんな状況でも笑顔でいる点はたしかにそうかもしれないですね(笑)。梅田さんは僕のことをすごくよく言ってくれますけど、逆に僕は梅田さんがめちゃくちゃチャレンジャーだと思っています。こんな若造にわざわざDMをくれるし、「一緒に仕事をやりません?」と言ってくれたときはめちゃくちゃシビれましたよ。僕が同じ立場ならなかなか言えないですから。

梅田:
いや、僕も誰彼構わず言っているわけではないですよ(笑)岸上さんが素晴らしいからです。それから2年経って、『DYSCHRONIA』が形になってよかったです。

岸上:
本当にありがたいです。

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[今回のウマいごはん]新鮮な国産素材を中心にした鶏料理とビストロ料理がリーズナブルに楽しめる「COQUERICOコクリコ)」。今回はお酒に合いそうな「鴨の炭火焼」(上写真)「地養鶏のとりさし3点」「シャルキュトリー盛合せ」などを注文した。

“ボジョレー化”した「VR元年」の最中にMyDearestを起業

梅田:
岸上さんの経歴も遡って聞かせてください。最初に入学したのは大阪大学でしたっけ?

岸上:
そうです。でも中退して上京しました。

梅田:
なんで中退したんですか?

岸上:
あまりにも東京に行きたかったからですね。当時18歳のとき、たまたま東京の市ヶ谷に浪人している幼稚園からの親友を応援しに行くことがあって、そいつに「お前はなんで東京にいないの?」と煽られて(笑)。そのままの勢いで母親に電話して、学費は全部自分で出すから東京の大学に行かせてくれ、と。

梅田:
学費を全部出すってすごいですね。

岸上:
だから家賃3000円の寮で生活することになるんです。慶應大学に行きましたけど、その男子寮では世間の方がイメージする慶應生の感じではなくて、オタク趣味丸出しの生活というか(笑)。

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梅田:
当時は何にハマっていたんですか?

岸上:
僕のオタク遍歴で特殊なのは、少女漫画が好きということです。世代的に一番ハマったのはフルーツバスケットという作品ですけど、大人向けの女性漫画からザ・少女漫画まで、たくさん読んでいました。

梅田:
そのへんの趣味を共同創業者の千田(翔太郎)さんはどんな感じで見ているんですか?

岸上:
なんか一歩引いた目線で、フフっと笑いながら見てますよ(笑)。

梅田:
その関係性も面白いですよね。千田さんとはいつ出会ったんですか?

岸上:
大学卒業後に就職したソフトバンク時代ですね。千田は出身が岩手で、群馬の大学から社会人になって上京したんです。大学時代は遊びに行っても埼玉の大宮まで、東京は恐くて来れなかった、と(笑)。それで満を辞して社会人で東京に来たので、当時は死ぬほど尖っていたんですよね。

梅田:
東京のヤツらには負けんぞ、と(笑)。岸上さんの大学時代からソフトバンクに入社するあたりってVRの状況はどんな感じでしたか?

岸上:
僕がVRをやりはじめたきっかけは大学の寮に住んでいた後輩の影響なんです。その後輩は中学時代からVRを研究していた変態だったんですけど…。

梅田:
えっ、VRってそんなに昔からありましたっけ?

岸上:
いや、当時はまったく流行っていなかったです。そんな状況でも中学から研究しているというバリバリの理系の後輩と出会って、僕も変人が好きだったので彼と仲良くなって(笑)。そうこうしているうちにOculusが出てきました。Oculusのキックスターターが始まったのが2012年、製品版のリリースは2016年で僕が起業したタイミングでしたが、僕は開発機版のときに手に入れて触っていましたね。

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梅田:
まだVRが出てきていないときに起業しようと思ったきっかけは何だったんですか?

岸上:
そもそも起業しようとはまったく思っていなかったんです。でも就活をして、自分はまともな社会人にはなれないな…と気づいたんですよ。

梅田:
それはなぜですか?

岸上:
面接をしていても、相手に合わせた“普通のこと”が言えないんですよね。当時はお金を節約していたこともあって、日清の面接を受けるとカップヌードルがもらえると聞いて、それ欲しさ受けに行ったり…(笑)。そんなレベルで就活をしているなかでVRと出会ったんです。将来、自分の会社でVRをやるのはありだな、と。

梅田:
じゃあ入る段階ですでに起業するつもりだったんですね。ソフトバンクには何年在籍したんですか?

岸上:
1年ですね。2015年の当時、「来年(2016年)はVR元年」になると言われていたんです。OculusPlayStation VRがリリースされて、これから一気に普及するぞ、と。このタイミングで起業しないでいつするんだ、と焚き付けられたような気がして起業したんですが、結果的に「元年」にはならず、苦労することになりました(笑)。

梅田:
実際の「VR元年」って岸上さんの感覚では何年なんですか?

岸上:
それ以降、「来年がVR元年になる」と言われ続けて、ボジョレーヌーボー化したんです。「来年こそがここ数年で一番のVR元年」と(笑)。実際の元年は2020年ですかね。

梅田:
だいぶ後ですね(笑)。

岸上:
Oculus RiftというPC向けのデバイスが2016年に出ましたが、スタンドアローン型のOculus Questが出たのが2019年でした。そこからやっと市場が立ち上がったイメージで、『TOKYO CHRONOS』を出したのもその頃でしたね。

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「エンタメは甘くない」社運を賭けて生まれた『TOKYO CHRONOS』

梅田:
 起業から『TOKYO CHRONOS』までの間は何をやっていたんですか?

岸上:
 ゲームではないものも含めてVR作品を作っていたんですけど、全然ヒットせず…。僕がディレクターをやった作品があまりにも不発で、千田から「お前は一生ディレクターをやるな」と言われて、チームから外されたこともあって(笑)。『TOKYO CHRONOS』までは金策に明け暮れていたり、三木一馬【※】さんに弟子入りして学びを得ていたりした時期でした。

三木一馬
ライトノベル編集者/プロデューサー。『とある魔術の禁書目録』や『ソードアート・オンライン』などの作品を世に送り出した。

梅田:
出資も受けていたと思うんですけど、当時の会社をワンセンテンスで表すとしたら何と説明していましたか?

岸上:
世界観とキャラクターがちゃんとしているVRゲームを作る会社、ですかね。あとVRゲームの市場が将来こうなるはずだという仮説を唱えていました。当時はプレイ時間が5〜10分、長くても30分のアトラクション型のVRゲームばかりでしたが、いつか必ず物語性のあるVRゲームの時代がきますよ、と。

梅田:
『TOKYO CHRONOS』はまさに日本で初の物語性のあるVRゲームで、ある種金字塔ですよね。

岸上:
『TOKYO CHRONOS』は本当に人生を賭けて開発していましたし、外れたら会社は潰れていたかもしれません。それまではマックス1,000万円弱の予算規模でしか作ったことがなかったんですけど、『TOKYO CHRONOS』はいきなり7,000万円ぐらいの大勝負。当時はお金がなかったので、クラウドファンディングで2,000万円ぐらい集めて、そこからなんとか投資につなげて資金調達したんです。

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梅田:
なるほど。手応えはどうでしたか?

岸上:
『TOKYO CHRONOS』を作っているときに感じたのは、本当に面白いと思ってもらえるゲームは本気で作らないと無理だということです。いい意味で、エンタメって甘くねぇな、と。だから自分のレベルを超えている人と一緒にやらないと、面白いゲームは作れないと思ったんです。『TOKYO CHRONOS』のディレクターの柏倉(晴樹)やキャラクターデザインのLAMさんのような人ですね。

梅田:
「エンタメは甘くない」ということを岸上さんの年齢で気づけているのがすごいなと思います。

岸上:
すでに娯楽はあふれているし、世の中に出ているほとんどのものは面白いんです。その中で戦うことになるで、どれだけ見て触ってもらえるか、どれだけ尖っているか、その尖りが本当に深く刺さるか…これに人生を賭けないと、エンタメの世界では死んでしまうな、と。身の丈に合わない予算と、身の丈に合わない規模でやらないと、世の中の人は見向きもしてくれないと痛感しましたね。

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ロボットに乗り込むという夢を叶えたVRゲーム『ALTDEUS』

梅田:
『TOKYO CHRONOS』は話題になり、ヒットして『ALTDEUS: Beyond Chronos』につながるわけですけど、『ALTDEUS』はさらに予算をかけていますよね?

岸上:
『TOKYO CHRONOS』は異色の作品で、VRゲーム市場のコンテンツの平均単価が1000円ぐらいの時代に4000円で出したんです。プレイ時間も10時間ぐらいかかるし、VRゲームにありがちなジェットコースター性ではなく、物語性に振り切ったゲームでした。Facebook(現・Meta)は当初売れると思っていなかったみたいなんですけど、話題になったことで推してくれたんです。それでさらに売れて、MyDearestの初のヒットタイトルになりました。そんな経緯もあって、その年の東京ゲームショウにFacebookの担当者が来てくれて、Meta Quest 2が出るということを教えてもらったんです。そこで「ローンチタイトルを探しているから作らない?」というのが『ALTDEUS』のきっかけだったんです。

梅田:
『ALTDEUS』は本当に面白いんですけど、ロボットに乗り込むという男の子の夢を叶えるような体感がすごいな、と。ある意味、VRゲームのひとつの正解だったと思うんです。

岸上:
『TOKYO CHRONOS』の制作中に柏倉が『ALTDEUS』の構想を話しだしたんです。すごく面白そうと言ったら、柏倉が気持ちの込もったクリエイターらしい資料を急に書いてきて……。

梅田:
たまにありますよね、クリエイターらしい想いが込められた“想い書”(笑)。

岸上:
VRって巨大なものにロマンがあると言われていて、ゲームの世界に入ってものを見上げるという体験は、平面では実現できないじゃないですか。“想い書”にもロボットのような大きなものを描いてあって、これはVRの表現として面白いな、と。

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梅田:
僕は小学1年ぐらいのときに見たガンダムに乗り込む夢をいまだに覚えているんです。それと一緒だったんですよね、『ALTDEUS』は。だから本当にすげぇと思ったんですよ。もちろんストーリーありきなんですけど、ストーリーの中にロボットの発進シーンのような体験が必ずあって、すごく具現化されて物語に入り込める。

岸上:
柏倉が書いた企画書をより分かりやすくするために、千田も梅田さんと同じようなことを言っていました。ロボットに乗り込むという夢のような体験というのがすごく刺さるし、VRにマッチしている、と。

梅田:
千田さんもそのへんのカンがいいですね。

岸上:
ありがたいことに業界の方や各社のゲームクリエイターにもプレイしてもらって、ロボットの乗り込むシーケンスが現時点のVRゲームの正解だと言われることが多いですね。

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ボリュームたっぷりで特製ソースが美味しい「小エビとアボカドのサラダ

SwitchがあるからといってVRの表現が薄まっていてはダメ

梅田:
『ALTDEUS』の次が一緒にやった『DYSCHRONIA』ですよね。

岸上:
最初にVRとSwitch、両対応のゲームにしましょうと梅田さんから言われて驚きました。僕も結構突飛な発想をするほうですけど、そんな発想があるのか!? と。

梅田:
僕は『ALTDEUS』に関して結構熱狂的なファンで、他のVRゲームもプレイするんですけど、いまの日本の市場を見たときに、VRのデバイスを持っている人口と、Switchを持っている人口では100倍ぐらい差があるじゃないですか?

岸上:
いや、500倍ぐらい違うと思いますよ(笑)。

梅田:
そう、だからもったいないんですよね。『ALTDEUS』のようなめちゃくちゃ面白い体験はVRに特化することによって強みが伝わりやすいのは分かるんですけど、Switchにも最適化してユーザーの幅を広げたほうが絶対にいいと思ったんです。僕らはコンシューマーゲームを作るのが得意なので、それを一緒に開発できるんじゃないか、と。

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岸上:
『DYSCHRONIA』を一緒にやってみて、梅田さんって想像以上にクリエイターを信じる人だと思いました。開発当初、「VRに振り切ってください」と言われて、またビックリしたんです。VRに振り切りすぎると、Switchへの最適化が大変じゃないですか。それでもVRとしての面白さを追求するべきだと言われて、クレイジーだな、と(笑)。

梅田:
MyDearestさんが作る以上、SwitchがあるからといってVRの表現が薄まっていてはダメなんですよね。だから「VRだけを作っている感覚で作っていいですよ」と言ったと思います。それをできる限りSwitch最適化して、Switchでも面白いゲームにするということが僕らのチャレンジでしたから。

岸上:
VRとSwitchの体感はそもそも違うので、それぞれの一番いい体験を突き詰めている、というか。すごくいい意味で別のゲームの体感なんですよね。まあ、それが狂っているんですけどね(笑)。だって、もっとコスパがいい、あざといやり方もあったはずなんです。それをあえてしていない…これはマジですごいことだし、梅田さんたちと一緒にやって良かったと思いました。

梅田:
『DYSCHRONIA』は自分たちが関わっていなくても、普通に買ってプレイしたでしょうね。

岸上:
僕はプレミアムボックスを買っていたと思います(笑)。

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