12月13日に旅館業法が改正されました。これにより、宿泊施設の事業者が、迷惑行為をする客の宿泊を拒否できるようになりました。

 では、実際に事業者が客の宿泊を拒否できるケースとは、どのようなものなのでしょうか。迷惑行為をした客は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

客が損害賠償請求を受ける可能性

Q.そもそも、旅館業法が12月13日に改正されたことで、主にどのような点が変わったのでしょうか。

牧野さん「旅館業法の改正前は、伝染病のほか、賭博などの違法行為という合理的な理由がない限り、客の宿泊を拒否できませんでした。もし拒否した場合、旅館業法違反として事業者側に50万円以下の罰金が科されていました。

今回の改正により、宿泊拒否事由が追加され、従業員に対し、カスタマーハラスメントに該当する特定の要求を行った人の宿泊を拒むことができるようになりました。

例えば、『不当な割引・アップグレード』『契約にない送迎などの過剰なサービスの要求』『対面や電話などにより長時間にわたり不当な要求を行う行為』のほか、要求の内容の妥当性に照らして当該要求を実現するための手段・態様が不相当なものが該当します。

手段・態様が不相当なものとしては、暴行や傷害といった身体的な攻撃のほか、脅迫や中傷、名誉毀損(きそん)、侮辱、暴言といった精神的な攻撃、土下座の要求などが当てはまります」

Q.では、客が宿泊施設の事業者に対して理不尽な要求をしたり、長時間にわたってクレームを入れたりするなどの行為をした場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「対応した従業員に精神的損害が発生したなど、宿泊施設の事業者に損害が発生した場合、理不尽な要求をした人や長時間にわたってクレームを入れた人は、民事上の不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります」

Q.宿泊施設の事業者が、客の宿泊を拒否できないケースについて、教えてください。

牧野さん「今回の法改正では、障害を理由にした宿泊拒否ができない点が、より踏み込んだ形で規定されました。障害のある人が、フロントなどで筆談でのコミュニケーションを求めたり、車椅子の利用者がベッドに移動する際に介助を求めたりするなどした際に、事業者側が、障壁(バリアー)の除去ができないことを理由に、宿泊を拒否することはできません」

 年末年始にホテルや旅館を予約している人は多いと思いますが、節度を持って利用しましょう。

オトナンサー編集部

12月13日に旅館業法が改正され、迷惑行為をする客の宿泊を拒否できるようになった