オクトパストラベラーⅡ』というゲームを遊びました。

HD-2D」という技術をフル活用したRPG、オクトパストラベラーの続編です。

単純に、面白かったです。もう、ただただ純粋に面白かったです。
これはまさに、真っ向から「RPG」を浴びる作品だと思います。

こんなに真っ向勝負で来られてしまうと、こっちも真正面から書かざるを得ない。

なのでこの記事、超シンプルに「オクトラ2が面白いので、遊んでみてほしいです」ということを書いています。どこが面白いのか? 何が面白いのか? この記事を見れば、大体わかると思います。……マズい、いますごいフカシたことを書いた気がする。気楽に読んでください!

すっごいシンプルに始まります。よろしくお願いします。

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文/ジスマロック
編集/実存

『オクトパストラベラーⅡ』公式サイトはこちら

押し通る!(アンテロープ・スタッグ)

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8人のキャラの物語を体験するRPG、それが『オクトパストラベラー』。そして、それは続編でも同じ。バーッと広げられた世界地図と、各地に点在する主人公。

まず最初に行うのは、その8人の中から「主人公」を決めること。

もう、迷う。

結局8人分のお話は全部見られるからこの主人公選択による変なルート分岐とかはないのだけれど、いざ「さぁ8人の中から1人を選びたまえ!」と言われると、これが結構迷う。ヒトリダケナンテエラベナイヨー しかし、そんなに迷っている時間はない。なぜなら、締め切りという名の悪魔が口を開けて待っているから……。

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とはいえ、オクトラⅡは元々やりたかったゲームでもある。「じゃあお前なんで発売当時スルーしてたんだよ」とか言わないでください。うーん、気分? あるじゃん? 「なんか理由はないけどスルーしてたゲーム」って……。な、なんでスルーしてたんだっけ……?

そして選んだ最初の主人公、ヒカリ・ク」
なんだか和風な「ク国」の第二王子である21歳の剣士、それがヒカリ

選んだ理由は……「この中で一番主人公として選ばれる想定で作られてそう」だから。主人公オーラがすごい。最悪なメタ読みだよ。わたし、格ゲーでもとりあえず「多分主人公が一番使いやすいように作られてるでしょ」という設計メタ読みから入るタイプです。あ、あと一応ヒカリ君と同い年だし……(?)

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ヒカリで遊び始めて驚いたこと……それは、「声優」

ヒカリ役を担当しているのは「松田洋治」氏。平たく言うと、アシタカの人」である。なにこの「もうこれがやりたかっただけだろ」キャスティング。普通に「押し通る!」とか言い出すからすごい。

そしてヒカリ殿、もう主人公ムーブがすごい。

数々の国を支配した「ク国」の王子でありながら、血の流れない平和を望むヒカリ。だが、ク国をより強大な国にしたい覇王思考な第一王子「ムゲン」とは全然ソリが合わない。当然である。元の国王はヒカリを次代に選ぼうとしていたものの、ムゲンが王を殺害しそのまま玉座を奪取。完全に邪魔者となったヒカリは「叛逆者」として国を追われる……という導入です。めちゃくちゃ主人公の境遇ですね。

こんな風に、身分も立場も違う8人の旅人の物語を体験するRPGが『オクトパストラベラー』です。明らかにヒカリ殿がぶっちぎって主人公っぽいのに、これに相当するキャラがあと7人もいます。メタ読みで選ぶのもアリ、単に性癖にビビっと来たキャラを選ぶのもアリ!

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そしてやっぱりHD-2Dで描かれる美麗なマップも外せない。

何気に、HD-2Dタイトルってもう何本も出ているのです。上の4枚は、とりあえず右上から発売順に『オクトパストラベラートライアングルストラテジー』『ライブ・ア・ライブ(リメイク版)』オクトパストラベラーⅡ』のゲーム画面を並べてみたものです。こうすると、着実な進化がよくわかります。

緻密なオブジェクト、繊細なライティング……『オクトラⅡ』はまさに「HD-2Dのver.2」と言ってもいいくらいの進化を遂げています。しかし冷静に考えてみると、私はこれまでのHD-2Dタイトルを一応全部プレイしていたんですね。ますますなぜ『オクトラⅡ』をスルーしていたのかわからなくなってきた。

いや、別に意識して「HD-2Dのタイトルは全部やる!」とか意気込んでたわけじゃないのですが……なんか無意識のうちに全部やってました。そんな私から見ても、今作の進化っぷりはすごいということです。むしろここの「マップの良さ」を求めてやってるようなとこありますからね。

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こういう風景を無限に楽しめます。

『モンスター烈伝 オレカバトル』って知ってる?

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公式サイトより

突然だが、『モンスター烈伝 オレカバトル』というゲームをご存知だろうか。

コナミが作っていたアーケードゲームで、私が小学生くらいの頃にそれはそれは周囲で大流行りしていた。ここで「キッズにとってオレカバトルがいかに革命的だったか」とかを書き始めると記事の趣旨が全く変わってしまうので割愛するけれど……とにかく「すごい100円ゲームがあった」ということだ。

そしてこのオレカバトル』、BGMがやたらカッコいい「100円ゲームの音楽」なんて普段は全く意識しないはずなのに、当時小学生だった私も「音楽のカッコよさ」を意識せざるを得ないくらい、BGMがイカしたゲームだったのだ。で、ここで話が『オクトパストラベラー』に戻ってくる。

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オクトパストラベラー』は、1作目からとにかく「音楽」の評価が高い。

かくいう私も、数年前に1作目をプレイした時「ボスバトル2」というボス戦BGMの鮮烈なカッコよさに痺れたのを未だに覚えている。1作目をプレイしていない方は、ぜひお手持ちのサブスクリプションサービスで今すぐ「ボスバトル2」を再生してみてほしい。イントロで飛ぶぞ。

そして1作目で「ボスバトル2」を初めて聞いた時、私は海原雄山のごとき勢いで「この曲を作ったのは誰だ!!」と検索した。そこで出てきた名、西木康智。1作目も2作目も、この方が『オクトパストラベラー』のサウンドをほぼすべて担当している。

なんとこの方、あの『モンスター烈伝 オレカバトル』でもメインコンポーザーを担当していたのだ! この事実を知った時、私はまさに「俺の故郷を焼いたのは貴様かーッ!!」と親の仇に出会ったような気持ちになった!! どういう例え? とにかく、数年越しにまた出会ってしまった!

あぁほら、アレですよ。FF14の「漆黒のヴィランズ」で「このシナリオを書いたのは誰だ!!」と調べてみたら、昔Fate EXTRA/CCCを作っていた人だったと知った時の「俺の故郷を焼いたのは貴様かーッ!!」と同じ感情です。この例え、光の戦士にしか伝わってない気がする。

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この音楽面に関して言及したいのが、「アグネア」というキャラ。

この子もこの子で「CV水瀬いのりの田舎訛りキャラ」とか「やたらと胸がデカいことをいじられる」とかいろいろ面白ポイントがあるのですが……やっぱり「踊子」のキャラクターなだけあって、とにかく「音楽」の演出が素晴らしいのです。

そして今作の「音楽」で最も高まるシーン……それはやっぱり「ボス戦」。これはどのRPGでも同じ。だけどより正確に言えば、このゲームはボス戦前から、ボス戦に突入するまでの一連のシーン」が本当にすごい。わかりやすいよう、動画を貼っておきましょう。

ボス戦に突入する前、アグネアのセリフと共にケルト調なBGMが流れ始める。これはアグネアのテーマBGM。そしてボス戦に突入した瞬間、「アグネアのテーマ」が何の違和感もなく「ボス戦の曲」に切り替わる! テンションを下げることなく、違和感なく、間断なく、シームレスに曲が切り替わる!!

ここの「高まり」が本当に熱い。ぶっちゃけどんな変な相手と戦っててもなんとなくこの演出で「ウオオオオオオ!!」と血潮がたぎってくるので、上手いことBGMに騙されてるような気がしなくもない。とにかく、必ずボス戦は絶対に盛り上げてくる。特にアグネアは毎回UO炊きたいくらいですね。

そして、もちろんこのボス戦演出は「キャラごとに」違います。アグネアのボス戦ではケルト調なテーマ曲が流れるように、ヒカリボス戦では和風なテーマ曲が流れるのです! そして見事にボス戦曲に切り替わる! ヒカリverも好きすぎるので動画貼っておきます。2章の「百の屍のバンデラム」が強すぎて半ばトラウマなのは内緒です。

しかしアグネア……個人的には「プリムロゼ【※1】に比べて、なんて光属性の踊子なんだ」という驚きがあります。踊子の振れ幅が1作目と2作目ですごすぎるだろ。どっちかっていうと「トレサ族」ですよね。なんだかんだ結構な確率でハードな話が展開される『オクトラⅡ』の中でも、ぶっちぎりで明るいお話をやってくれます。

アグネア編の街のみんなに送り出してもらえるエピソードの締め方、大好きなのよ……。しかもあのシーンにテーマ曲がついてくるんだから最高。自分が「RPGに求めているもの」がアグネア編には詰まっていました。でもただの踊子じゃねえぞ……ド級の踊子だ! 音が強ぇRPGなのか……?

※1「プリムロゼ」
前作『オクトパストラベラー』に登場した踊子の主人公。アグネアとは対照的に、結構ハードなお話が展開される。アグネアはどちらかというとトレサの正当後継者だと思われます。

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街中で人妻と決闘しよう。街の子供からぬいぐるみを取り上げよう

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そして『オクトパストラベラー』お馴染みのシステムと言えば、キャラごとに用意された「フィールドコマンド」! これはフィールドのNPCに対して特殊な行動を実行できるシステムで……たとえば薬師のキャスティで「聞き込み」を行うと、こんな風に街を歩いているNPCの情報をゲットできます。

この情報、少なくともフィールドコマンド実行可能なNPCであれば全員分用意されています。テキスト班の労力を考えると気が狂いそうですね。しかもこの情報、やたらと凝っているのが面白い。

たとえば上の画像。
31歳女性の方ですが、どうやら「夫と息子の三人家族。結婚前は花屋で、今も教会に納めるブーケを作る内職をしている。教会で知り合った老人と不倫関係にある」そうです。最悪だよ。こんな情報見なきゃよかった。なんてふしだらな女なんだ。さらに、街にはこの町人の息子だと思われるNPCが配置されていたりします。なぜRPGで他所の家庭の歪みっぷりを垣間見なくてはいけないのか。

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もちろん、このコマンドはキャラごとによって大きく変わります。

たとえばヒカリの場合、「試合」というコマンドを実行するとそのまま街のNPCと1対1の対決に映り、勝利するとそのNPCが所有している技を習得できるのです。なので、さっきのふしだらな人妻と決闘することもできます。ヒカリ殿……嘘でござるよな……?

さらに「アグネア」の場合、おねだりというコマンドで街の人たちから無償でアイテムをもらうことができます。無償です。レベルさえ足りていれば、どんな相手からも無償でアイテムをもらえます。だからさっきの人妻からアイテムをもらうこともできるし、街の無垢な少年を誘惑して大切なぬいぐるみをかっぱらうこともできます。

ヤバい、急にインモラルRPGになってきた。ほら、アグネアってスタイルいいからね。少年、これが大人のやり方だよ。フィールドコマンドで遊び始めると、なんだか途端にゲームの様子がおかしくなってきます。

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全て……とまでは言えませんが、こんな風にNPCごとに情報が書かれてます。
ていうか、これ尋常じゃない労力です。
ううん、見れば見るほどすごい……。
そう、まさにこのNPCの情報量こそが今作の気合の入りっぷりを象徴しています。

縦読みガバガバじゃねえか!!
とにかく、あのNPCやこのNPCに謎の情報が書かれてたり……?

この「NPCの情報」に関して紹介したいのが、グラヴェルという街にいる「少年」。ただ話しかける分には、いたって普通の少年です。ところがこの子、不思議な持ち物を持っています。

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それが、「ぬイぐるみ」

最初に見た時、「おっ、バグか?浅野チームに報告したろ!」とか考えてたんですが……アイテムの詳細をスクロールしてみると「いっしょにあそぼ」というメッセージだけが書かれています。このゲーム、基本的にフィールドコマンドで干渉できるならばどんなNPCからもアイテムをゲットできます。

ですが、この「ぬイぐるみ」だけは「盗む不可」となっています。
急にホラゲーになってきた。アイテム詳細をずーっとスクロールすると、端っこに「いっしょにあそぼ」の一言が添えられています。いやぁ、バグでしょ……(震え声)

しかもこの少年、しっかりとイベントが用意されています。
特定の条件下で少年が街を出るので、この少年の情報を暴いてみると…………

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こういうメッセージが出てきます。

死。邪悪。憎悪。怨嗟。殺意。不幸。呪詛。地獄。倫理。愚者。暴君。咎人。狡猾。賊徒。卑劣。悪。毒。飢餓。疫病。地震。天変。異形。人間。厄災。永遠。時間。精神。根源。虚構。暗黒。無垢。命。

……なんだか怖い言葉がいっぱい並んでますね。
私の心の中の黛冬優子「ふゆ、怖いですぅ〜♥」と言っています。

冬優子ちゃうやろ!!!!!!!!!

もう街中にラスボスがいるパターンです。
流石にこれは極端な例ですが……とにかNPCに異様に情報量が詰め込まれています。なんならもう、とりあえず街についたらNPCの情報漁りまくってるだけで時間が飛んでしまいます。

極論、NPCのアイテムを片っ端から盗んでいる時が一番楽しい

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このフィールドコマンドの「最大手」と言っても過言ではないのが、盗賊の「ソローネ」。もうジョブで察してください。さっき一瞬話題に出ていましたが、フィールドコマンドでひたすらNPCからアイテムを盗むことができます。

アグネアはあくまで「おねだり」という双方の合意のもとアイテムの譲渡が行われるので、いくらか罪悪感が軽減されていたのですが……ソローネに関しては直球で「盗む」です。金持ちの貴族からも、家族を養う母親からも、貧しい子供からも、みな等しく「盗む」ことができます。

言い方を変えるだけでこんなに嫌な気持ちになるなんて、日本語って難しいね!

たとえば、街の貧民街で「兄ちゃん!カビの生えてないパン、もらった!」と喜んでいる少女から、容赦なく「小麦のパン」というアイテムを盗むこともできます。なんで盗む側が精神的ダメージ受けなきゃいけないんですか? ソローネだけ急に世界観がグラセフみたいになってんだよ。

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そしてこの「盗む」は、先ほど紹介したNPCの情報」とも噛み合ってきます。たとえば、カナルブラインという街にいる商人。どうやら「ひとりで屋台を切り盛りする快活な女性。働き者で数年前から1日も休んでいない。懸命に働くのは寂しさを紛らわすため。店を閉めた後は、漁に出たきり戻らない夫のことを考え続けている」そうです。

うーん、なんて泣けるエピソードなのでしょう。
こういうところにウィットが効いているのが、今作のいいところです。

ですが、この商人に「盗む」を使用すると……「形見のモリ」というアイテムを盗むことができます。最悪。本当に最悪。しかも形見のモリ、カナルブラインに行く頃の進行度だと「ちょうど強い」くらいの性能なんだこれが!

だから、「性能が強いので普通に盗んでしまう」という状況を誘発するように作られているのです。たぶん。お前ら人間じゃねえ!

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「形見のモリ」、実は1作目からあったりします。どういう伝統だよ……。

「盗む」のおそろしいところは、その本質的な結果にある。

要は、過程をすっ飛ばして効果だけ説明すれば「とりあえずアイテムが無料で手に入る」ということなのだ。日本語って本当に難しいね。もう俺はディアボロだよ。

新しい街に行く。NPCに話しかける。「盗む」を実行すると、結構いい感じの防具や回復アイテムを持っていた。とりあえず全部盗んだ。デメリットは一切ない。

これを繰り返すだけで、別に道具屋や武器屋で買い物なんかしなくても「気がついたら強い」状態になっている。なんなら武器屋で売られている物の数倍強いアイテムを、その辺のNPCが何食わぬ顔で持っていたりする。

だからもう、新しい街に到着した時に真っ先にやることが「とりあえずNPCの持っているものを片っ端から盗んでみる」である。ここまで来たら大盗賊を名乗ってもいいでしょう。俺は逃げも隠れもせん! 正々堂々真正面から街中の人間の持ち物全部盗んでやる!!

私から言わせれば、オクトパストラベラーⅡ』を遊んでいて一番楽しいのはこの「街に到着したら片っ端からNPCの持ち物を全部盗んでいる時」である。マズい、どんどん私の倫理観が疑われてきている気がする。違うんです、悪いのはソローネの手癖です。「盗む」に大したデメリットがないのが悪いんです。こんな非人道的なことを許容するこのゲームが悪いんです。

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そうだ、思い出した。実は今作、目玉要素として「昼と夜」というシステムが搭載されています。シンプルに言ってしまえば「昼と夜を切り替えられる」というだけの仕組みなのですが……この「昼夜の違い」はフィールドコマンドに最も影響を及ぼします。

たとえばソローネの場合、昼は「盗む」、夜は「闇討ち」というアビリティを実行できます。どっちもロクでもねえな。「闇討ち」は……その名の通り、「NPCを闇討ちして気絶させることができる」という効果です。非常にシンプルに言ってしまえば、「邪魔なNPCを排除できる」アビリティです。

例を挙げるとすれば……ある街に、家のドアの前から一歩も動かない盗賊のNPCがいます。このNPC、明らかに家の中に何かを隠している。コイツ、邪魔だな……。アナタがそう思ったのなら、闇討ちを実行してみましょう。すると、盗賊が倒れて家の中に入れるようになります。もうただの強盗だよ!!

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そして家の中には、あるひとりの少女がいました。

「声を失くした少女。話せぬがゆえ、自身の過去を伝えるすべは無い。しかし、少なくとも今の生活が言葉を話せなくなる前より幸せだということは、その笑顔を見るだけで十分に伝わってくる。」らしいです。うーん、感動的だね。なんて心温まるエピソードなのでしょう……。

お──っと失礼手が滑ったァ!
持ち物、確認させてもらうね!!

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「やはり」と言ってしまってはなんですが……この少女、「開錠ピック」というこの街に到達する時点ではあまりに破格の火力の武器を持っていました。私がプレイしていた時、平均的な武器の攻撃力は+150くらい。そこに対して開錠ピックの攻撃力、なんと約2倍の+304 もう、どんな手を使ってでも手に入れたい!!

そう、こんな風にNPCが何かを隠している場所には、決まってこういう「壊れ」要素が隠されているのです。だからこそ、「闇討ち」が重要になってきます。

しかしこの開錠ピック……画像を見ていただければわかる通り、とにかく「盗む」成功確率が低い。その確率、およそ8%! 「やや良心的なソシャゲの最高レア排出率」くらいですね。ちなみにこれ、何度か失敗すると一時的にフィールドコマンドでの干渉が不可能になります。なので、もう失敗したらリセット! 8%を引き当てるまでひたすら少女の持ち物に手を突っ込み続ける!!

……もう、誉は浜で死にました。
俺は勇者でも光の戦士でもない、「旅人」なんだ! 少女の過去? 知ったことか!! そんなことより壊れ武器だ壊れ武器!! はよ開錠ピック寄越さんかい!!!

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私の書き方のせいで、まるでソローネまでとんでもないならず者だと思われていそうですね。すいません、私のプレイングがよくないだけです。ソローネはとても良いキャラクターです。

幼い頃から「黒蛇」という殺し屋集団の中で育てられてきたソローネは、やがて「自由」を夢見るようになる。自分の置かれた環境がいかに歪んでいるのか、ソローネは血塗られた日常を送る中で気がついた。この旅は、自由を手に入れるため。自分につけられた「運命」という名の首輪を外すまでの物語。

首輪を外すための鍵は、組織のトップである「ファーザー」と「マザー」が持っている。この家出は、事実上の「離反」を意味する。果たしてソローネは、本当の「自由」を手に入れることができるのか。殺し屋稼業から、足を洗うことはできるのだろうか? ……って感じのストーリーです。

特に、宿敵だと思われていた「ファーザー」とのエピソードは必見。彼はやはり組織的な意味での「ファーザー」である以上、本当の父親ではありません。さて、上の「ねぇ……“父さん”って呼んでいい?」というセリフにどんな流れで辿り着くのでしょうね……?

クリック!聞けクリック!お前が欲しかった世界は、本当にそんな世界か!?クリック……この、馬鹿野郎っ!!いい加減にしろクリック!何もわかっちゃいないんだ、お前は!議長やレイの言う事は確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない。だが彼らの言葉は、やがて世界の全てを殺す!お前はそれを……!

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もう、このゲームを遊び始める前から「CV石田彰の神官だけは絶対にスタメンに入れよう」と決めていました。その名も、「テメノス」。ヘアカラー、白髪。職業、異端審問官。態度、慇懃無礼。そしてCV石田彰。テメノスも大概ヒカリに並ぶ「これがやりたかっただけだろ」キャスティングである。

そして私の場合、5番目くらいにとうとうテメノスが加入しました。

もう、すごい。なんていうか、石田彰みたいなキャラを石田彰がやってる」としか言いようがないくらい石田彰してる。テメノスばっかりは、本当に「これがやりたかっただけでしょ」と言われても何の反論もできないと思う。

いや、反論させない。させたくない。
「怨!!!」のCV石田彰と同じくらい「これがやりたかっただけでしょ」度が高い。

正直、もうテメノスの存在だけで満足していた。
ところがこのストーリー、「二の矢」がつがえられていたのだ。

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その名も「聖堂騎士クリック」

テメノス編にはこの「クリック」という組織から派遣されてきた騎士が度々登場する。しかもCV榎木淳弥。ちょっと堅物でピュアなところがある騎士で、飄々とした言動を繰り返すテメノスになんだかいつも振り回されてしまう。CV榎木淳弥の騎士が出てくるのは聞いてないんですけどォ~~~?????

なんかもう、テメノス編はおおよそこの「テメノスとクリックのいちゃいちゃ」を無限に見せられる。いや知らん。なんだこれは。てっきりCV石田彰の神官が大暴れするストーリーなのかと思っていたら、前情報になかったクリック君が大暴れしているではないか。なにこれ? アタシ何見せられてんの?

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そして驚くべきは……このストーリー、徐々に異端審問官(探偵)と騎士(助手)のバディもの」としての本性を表わしてくるのだ。突如、聖堂教会の「教皇」が殺害されてしまった。そこには不自然な殺害現場と、遺書のように残された聖典の一節があった。

「何事も疑ってかかるのが仕事」でもある異端審問官のテメノスは、この謎を解き明かすべく各地を巡りながら「教皇殺人事件」の真相へと近付いていく……。ここ、普通にアプローチとして面白い。異端審問官を実質的な「探偵」として解釈し、シナリオ全体をミステリー調に描く。まずここで一本取られている。

そしてクリック君とのわちゃわちゃしたかけ合いを描きつつ、「探偵バディもの」としての描写を強めてくる。いや、もう「テメノスとクリック君のいちゃいちゃ」だけでもうお腹いっぱいもいいところなのに、本筋のストーリーもガッツリ面白いから困るんだこれが!

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世界のあちこちでテメノスとクリック君は出会ってしまうのです。

もう……ぶっちゃけオクトパストラベラーⅡ』で一番好きなキャラはテメノスとクリック君ですね。いつもこうじゃん! いつもこういう関係が好きになってしまうんや!! 許してくれ!! 1章終わった瞬間に「クリック君は加入しないのォ!?」と叫んだくらいなので……。

え、でもみんなそうじゃない……?
テメノスとクリック君の組み合わせ嫌いな人いる……?
榎木淳弥がね、あまりにも「助手声」すぎるんですわ。間違いなくハマり役です。

ここから、ちょっと概念的なお話をします。正直、このチームが作るゲームに足りないものは「萌え」だと思っていました。たしかにゲームとしてはいつも面白い。毎回あんまり文句がないゲームを作ってくるのは、結構すごいことだと思う。

だけど、心を打たれるような「萌え」をあんまり感じない。理論とか技術とかではなく、ただひたすらに心を揺さぶられる「魔性」のようなものが、最後のピースとしてハマっていないような感覚があった。

強いて言えば、1作目に出ていた「サイラス【※2】がこの「萌え」の核心にかなり近付いていたような気がする。本当に酷い言い方だけど、「性癖をブッ刺してくれるかどうか」という話でもあります。

※2「サイラス
1作目『オクトパストラベラー』に登場した「学者」の主人公。声がカッコいい。こちらも中々にあざといキャラ造形をしている。「お前が梅原裕一郎の声好きなだけでは……?」とか言わないでください。

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この「萌え」という概念はおそろしいもので、たとえゲームが壊滅的な出来上がりであったり、シナリオが崩壊していたとしても、そこに一滴「萌え」が垂らされているだけで「あぁ、でもあそこがブッ刺さったから最高なんだよね……」と作品全体の印象を塗り替えてしまうものなのだ。逆もまた然り。どれだけ最高峰の出来栄えであっても、「萌え」がなかったものはどこか空虚に感じてしまう。

そしてテメノスとクリック君の描写で驚いたのは、この「萌え」の核心をガッチリと掴んでいるところだった。安易でもない。テンプレでもない。そこに、「テメノス」と「クリック」という人間がいる。感情移入できる。愛着が持てる。そして何より、「萌え」がある!

キミら……キミら「萌え」やれるやないか!!

……と、思ったのでした。な、なんか偉そうでスイマセン……。でも、そのくらいテメノスとクリック君のキャラの立ち方に感動したということです。『オクトラⅡ』で一番感動したのは、もしかしたらここかもしれません。キャラの立たせ方と描き方が、間違いなく進化しています。

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「世の中……理不尽ばっかりですけど、自分の信じたことくらいは……貫きたいなって。世の悪をたたっ斬って弱き者に手を差しのべる。そんな“剣”に……僕はなりたいんです」

これ、『オクトラⅡ』で一番好きなセリフです。

なんか最近、こういう「真っ直ぐさ」を見せられただけで心がおかしくなってしまう。汚れた世界で、それでも咲き誇る気高さ。それでも明日を掴もうとする美しさ。誰かに手を差し伸べようと思える優しさ。それらが「強さ」になって現れる瞬間。なによりも、なによりも尊いものだと思う。

もう……「クリック君のこと好き好きクラブ」としてもな……。
これが……これが『オクトラⅡ』のスリーズブーケだよ……。月・火・水・木・金・土・日、毎日がHoliday、Don’t stopで私の常識吹き飛ばして、君の世界へ連れてってだよ……。

オクトラⅡ』の8人の主人公の中で、「これはゲーム的に気合が入っているなぁ」と感じるシナリオは数多くありました。それこそヒカリとか、アグネアとか。だけど、最も「これは完全に筆が乗っているな!?」と感じさせてくれたのは、やっぱりテメノス編でした。もうここだけはキッパリ「テメノス編が一番良かった」と書いておきます。