異議あり!

説明するまでもないかもしれませんが、これは人気推理ゲーム逆転裁判から生まれた名台詞であり、逆転裁判のキモである証言のムジュンを指摘した際に発せられる言葉。その言葉の響き、発せられた時の爽快感は格別で、本シリーズを象徴するセリフと言っても過言ではありません。

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普通に発しているだけでもかなりの爽快感を持つ異議あり!ですが、特に、事件の真相やトリックが脳裏に閃いた時に繰り出す「異議あり!」の心地よさは別格。思わず一緒に声を出して叫びたくなってしまうほどです。

有罪がほぼ確定していると思われる状況にある被告人を弁護し、真犯人の企みを論理と物的証拠で打ち砕いて事件を文字通り逆転させていく姿は痛快としか形容しようがなく、この分かりやすくシンプルな構造こそが、本作の人気を不動のものにしたと言えるでしょう。

また、見た目が強烈というだけでなく印象的な動作をするキャラクターが多いのも『逆転裁判』シリーズの大きな特徴です。
殺人事件を取り扱うという性質上、冷静に考えると暗い気持ちになってしまいがちですが、個性的なキャラクターたちによる会話は基本的にギャグベースで進んでいくためプレイヤーに対して先へ先へとゲームをプレイしていきたい気持ちを湧き上がらせる一助となっているように思います。

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そして届いた、シリーズナンバリングタイトルである『逆転裁判4』『逆転裁判5』『逆転裁判6』の3作品を収録した逆転裁判456 王泥喜セレクション』発売決定の報せ。丁度流れゆく時の中でストーリーもうろ覚えになってきた頃合いです。
これは、久々に「異議あり!」を法廷と脳内に響き渡らせる快感に浸る、またとないチャンス。早速プレイし、本作の収録タイトルについて、『逆転裁判』というゲームシリーズそのものの魅力も含めてお話していければと思います。

文/DuckHead

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新章、開廷。それぞれに異なる特色を持つ収録タイトルたち

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さて、まずは『逆転裁判』シリーズと『逆転裁判456 王泥喜セレクション』に収録されているタイトルについて、簡単にご紹介しておきたいと思います。

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逆転裁判』シリーズを一言でまとめるならば、弁護士として法廷で殺人事件の真犯人を明らかにする推理ゲーム

プレイヤーは殺人事件の容疑者として逮捕された依頼人を弁護することで、真相の究明にあたります。

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そして、事件に隠された真実を詳らかにするために行うのが、法廷に立つ証人への尋問。

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彼らの言葉に耳を傾け、ゆさぶりをかけて新たな証言を引き出したり、証言内容と手元にある証拠品を照らし合わせ、明らかにおかしいもの、ムジュンしている証言を見つけだし「異議あり!」と高らかに叫ぶことで、証人の誤解や嘘が明らかとなり、裁判は進んでいきます。

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そして、事件の真相に辿り着き、被告人に対して正当な判決が下されればゲームクリア。晴れて事件は解決です。

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ちなみに、ムジュンの指摘を間違えてしまうとペナルティがあり、ゲージやカウンターが減少。一定回数間違えてしまうと、被告人は問答無用で有罪になってしまいます。この世の常識では俄かには信じがたい話ですが、被告人の命運は全て弁護士の手に委ねられているのです。

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そのタイトルにもある通り、本シリーズの面白さは、ほぼ有罪間違いなしと思われている被告人の無実を証明して逆転無罪を勝ち取ることでしょう。裁判が始まったときには単純に見えた事件も、裁判を進めていくことでその複雑な真実が少しずつ見えていき、その全容を理解することができた瞬間の快感は、それはもう凄まじいものがあります。

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……裏を返せば、誤認逮捕によって成立しているゲームとなっているのが、本作の恐ろしいところ。
「ちゃんと捜査しろよ」「制度に問題があるだろ」という疑問も出てくるかとは思いますが、『逆転裁判』シリーズの設定を深掘りしてみますと、この世界の法廷は、まず最初に起訴された容疑者が有罪かどうかを短期間で決めてしまい、量刑はそのあとで判決するという “序審制度” と呼ばれるルールの中で動いているということが分かります

冤罪を多く生み出してしまうことが容易に予想される、危うさしか感じられないこの制度は増加する凶悪犯罪に迅速に対処するために生み出されたものであると言いますから、平和そうに見えて中々に世紀末な状態にある『逆転裁判』シリーズの闇が垣間見えます。

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また、この序審制度を制定しなければならないほどの世紀末な治安のおかげで、警察はいちいち事件の捜査に人員を割くことができないため、彼らに代わって現場に赴いて証拠品を集めることも弁護士の仕事。この世界の弁護士は、探偵の要素も担っているのです。

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成歩堂龍一(『逆転裁判123 成歩堂セレクション』より)

そんな本シリーズの顔といえば、初代『逆転裁判』からの主人公である成歩堂龍一(ナルホドウ リュウイチ)、通称ナルホド君でしょう。

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初代では新人弁護士として登場した彼の武器は、依頼人の無実を信じ抜く正義感。論理を重んじる法廷において感情論は心もとないようにも感じられますが、彼のこの心が逆転の発想を生み出すのですから、間違いなく彼の最大の武器であると言えるでしょう。

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綾里真宵(『逆転裁判2』)

また、彼の相棒である霊媒師の綾里真宵とのやり取りは軽妙で、見るものを飽きさせません。ナルホド君とマヨイちゃんのペアは、『逆転裁判』シリーズと共に高い人気を誇ります。

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御剣怜侍(『逆転裁判』)

……余談にはなりますが、人気キャラでシリーズの看板であるナルホド君よりも、彼のライバルである御剣検事の方がファンが多いんじゃないかなという気はします。もっと言うと、私はゴドー検事の方が好きです。

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成歩堂龍一(『ULTIMATE MARVEL VS CAPCOM 3』より)

更に話は逸れますが、御剣検事にも勝るとも劣らない人気をもつナルホド君は、格闘ゲームULTIMATE MARVEL VS CAPCOM 3』では操作キャラクターとして参戦。なんと、スパイダーマンウルヴァリンデッドプールといったアメリカンコミックのキャラクターたちに混じって激戦を繰り広げています。

こちらでも彼の武器は変わらず裁判と「異議あり!」。弾が飛び交う乱打戦の中で裁判に持ち込むのはかなり厳しい条件になるのですが、不思議と裁判を繰り出したくなってしまうという、底知れぬ魅力のあるキャラクターです。

主人公交代を果たした『逆転裁判4』

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閑話休題。初代『逆転裁判』から『逆転裁判3』まで、魅力タップリの主人公として長年シリーズを支えてきたナルホド君ですが、『逆転裁判456』に収録されているタイトルの1つである逆転裁判4の主人公は、彼ではありません。

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本作の主人公の名は、王泥喜 法介(オドロキ ホウスケ)
親しい人からはオドロキ君と呼ばれる彼は、初代『逆転裁判』のナルホド君と同じように新人弁護士として登場します。

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被告人として法廷に立つナルホド君

かなりの熱血漢である彼の最初の依頼人は、なんとナルホド君。しかも、殺人事件の容疑者というのですから穏やかではありません。

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更に驚くべきことに、ナルホド君は弁護士ではなくなっており、 “ピアノが弾けないピアニスト” という、耳馴染みのなさすぎる訳の分からない肩書になっています。

前作からは想像もつかない姿に身をやつしているナルホド君ではありますが、変わったのは肩書や見た目だけではなく、その言動すらも飄々としていて前作までとは最早別人。シリーズファンの方にしか伝わらない名前で恐縮ですが、4のナルホド君よりも芝九蔵虎ノ助の方が、3までのナルホド君に似ているような気さえしてきます。

あまりにも劇的な主人公の交代劇。初プレイ時、「3と4の間で何があったらこんなことになるんだよ」と、かなり衝撃を受けたことを今でも覚えています。

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……しかも、3の頃には影も形も無かった、ナルホド君の娘である成歩堂みぬきまでもが登場するのですから。止まんねぇなお前。

ちなみにみぬきは、本作におけるオドロキ君の相棒。推理小説で言うところのワトソン、これまでの『逆転裁判』で言うところのマヨイちゃんの立ち位置ですね。

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様々な部分が変わってしまったナルホド君と新主人公として登場したオドロキ君。
逆転裁判3』と『逆転裁判4』の間には7年もの月日が流れているのですが、その空白の時間に何があったのかというところが、本作のストーリーの主軸となります。

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みぬく

そして、オドロキ君の特別な能力として『逆転裁判4』から新たに登場したのが、みぬく。これは、本作における目玉システムの1つであり、特定の状況で発動します。

この能力を使うことでオドロキ君は、証人がウソの証言や隠したいことがある場合に現れる動作のクセを指摘することができるようになり、それによって証人から新たな証言を引き出すことが可能となるのです。

これで法廷が大きく揺れ動くんですから、とんでもない話です。ある意味クセが凄い。

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また、Nintendo DSにて発売された本作の目玉の1つが “カガク捜査” 。DSのウリであったタッチパネルとタッチペンを使って画面上に粉を撒き、DSに搭載されているマイクに息を吹きかけることで粉を吹き飛ばして指紋を検出するといったような形で、DSの仕様を利用した意欲的な遊びが用意されていました。

このコレクションでは流石に息を吹きかけることはできませんが、どこに証拠が残っているのかを調べるカガク捜査の面白さは今回も健在です。

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また、本作の鍵を握るのが先ほど少し登場した序審制度。この世紀末な制度に裁判員制度が絡みつつ、ストーリーが進行していきます。
ちなみにですが、『逆転裁判4』が発売された当時は、現実世界でも裁判員制度が実施されるようになることが話題になっていた頃だったように思います。まぁ、『逆転裁判4』の裁判員裁判は現実の物とは大きく違うんですけどね。……それを言い出してしまったら、『逆転裁判』の裁判自体が現実とは大きく違うんですけれども。