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 世界的なインフレが続くなか、アメリカでは2023年、ホームレスの数が急増し、新記録に達したことを連邦政府当局が発表した。

 コロナ禍に提供されていた支援が打ち切られたことと家賃高騰により、今年アメリカのホームレスは65万人超えになったという。

 これは2022年に比べて12%の増加であり、2007年に年次調査を開始して以来の最高数である。

【画像】 アメリカのホームレスが今年65万人超えで過去最高に

 HUDアメリカ合衆国住宅都市開発省)は、アメリカのホームレス問題についての報告書を議会に提出し、2023年1月の時点ですでに65万3100人がホームレス状態にあったと述べた。これはアメリカ人1万人中約20人の割合である。

 2022年1月の同様の一晩の集計で報告されたホームレス状態にあるアメリカ人の数より12%増え、約7万650人増加したことになるという。

 2007年にHUDが年次調査を開始して以来過去最高数になった。

 また、2021年から2022年の間に初めてホームレスになった人の数は25%増加し、同期間にホームレス状態を脱した人の8%を大きく上回ったそうだ。

コロナ禍の支援終了と家賃高騰など複合的要因によるもの

 要因としては、コロナ禍で家賃が払えなくなった人を対象にした米政府の立ち退き猶予措置「立ち退きモラトリアム」など、支援プログラムの終了や賃貸料の高騰だ。

 アメリカは近年まで、政府が特に退役軍人を住宅に入居させるための投資を増やすことに注力し、ホームレス人口の減少において着実な進歩を遂げていた。

 ホームレスの数は、2010年の約63万7千人から2017年には約55万4千人まで減少したが、コロナ禍後の数年間は経済的な二重苦をもたらした。

 第一には、パンデミックによる経済的混乱を乗り切るための政府支援、つまり子ども税額控除や景気刺激策、その他の支援といったコロナ時代の援助や保護が打ち切られた。

 貧困が急増し、高齢者やシングルマザーなど弱い立場のアメリカ人に大きな打撃を与え、昨年は数千人のアメリカ人が家を失った。

 第二に、家賃が高騰した。2022年後半には、手頃な価格の住宅供給が極端に不足したのだ。

 ハーバード大学住宅研究共同センターによると、家賃負担は過去最高水準に達したという。

 所得が1万5千ドル(約210万円)を下回る低所得世帯のほぼ10世帯に9世帯が、2021年には収入の30%以上を住宅に費やしていると分析された。

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 一般的に、住宅が世帯収入の3分の1を超えると、住宅は購入不可能とみなされる。

 しかし、現在建設中の新しい住宅が来年にはより多く借りられるようになるため、家賃の上昇率は現在緩やかになっているとHUDの報告書では述べている。

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ホームレス問題は解決可能とHUD

 HUDはまた、2023年中に42万4000世帯以上がホームレス支援サービスにつながり、ホームレス状態を脱し、あるいはホームレス状態を完全に回避できるよう支援したと報告した。

 退役軍人局は3万8千人以上のホームレス退役軍人に住宅を提供し、2023年の目標を2か月早く達成したようだ。

 HUDマーシャ・ファッジ長官は次のように声明の中で述べ、バイデン政権の住宅供給行動計画の成果を誇示した。

ホームレス問題は解決可能であり、アメリカに存在すべきではない。前向きな前進を遂げましたが、まだやるべきことはあります。

このデータは、ホームレス状態から速やかに脱することを支援し、ホームレス状態になることを未然に防ぐ、実績のある解決策や戦略への支援が緊急に必要であることを強調しています。
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 一方、全米低所得者住宅連合(National Low Income Housing Coalition)の会長兼CEOのダイアン・イェンテル氏は、パンデミック時の保護措置が打ち切られたことで、かつて「安定した住居」を得ていた何百万人もの賃借人が、家賃の高騰と高インフレという残酷な住宅市場に再び参入せざるを得なくなったと述べた。

立ち退き申請率が多くのコミュニティでパンデミック前の平均に達するか、それを上回っているため、その結果ホームレスが増加しています。

最も所得の低い人々にとって手頃な価格の住宅を提供するための連邦政府による大規模かつ持続的な投資がなければ、この国における手頃な価格の住宅とホームレスの危機は悪化の一途をたどるでしょう。
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ホームレスの多い地域、特徴

 1月の調査では、約65万3000人がホームレス状態にあった。

 全体の増加の中で、個人のホームレスは約11%、退役軍人は7.4%、子供のいる家族は15.5%増加した。

 アメリカでは人口の13%が黒人だが、ホームレス経験者全体の37%を占めていることが判明している。また、ホームレス状態にある成人の4分の1以上は54歳以上だ。

 以下は、昨年1年間でホームレス人口が最も増加した5州だ。

ニューヨーク州:2万9022人(39.1%増)
コロラド州:4042人(38.9%増)
マサチューセッツ州:3634人(23.4%増)
フロリダ州:4797人(18.5%増)
カリフォルニア州:9878人(5.8%増)

References:Homelessness surged by 12% to more than 650,000 in 2023, HUD report says/ Homelessness in America reaches record level amid rising rents and end of COVID aid - CBS News / written by Scarlet / edited by parumo

 
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2023年にアメリカのホームレスが急増、65万人を超え過去最高レベルに