「『スカーレットネクサス』のキャラのコスプレで東京マラソンを走るのですが、これって取材の対象になりますか?」

──という相談を受け、電ファミで取材というのは正直難しいけど、どうもマラソンに関してはガチっぽい。というわけで、東京マラソン自体のレポートを直接ご本人に書いていただきました。(電ファミ編集部)

自己紹介

はじめまして、穴吹健児と申します。
バンダイナムコスタジオという会社で、これまでテイルズ オブスカーレットネクサスなどのゲーム開発に携わってきました。

「誰??」って思う方がほとんどだと思いますが、電ファミニコゲーマーさんで昨年スカーレットネクサススクショを1000日間投稿し続けた」ことを記事として取り上げて頂いた者です。

「あぁ、そんな人いたかもね」と、うっすら覚えてくれている方がいたら嬉しいです。

そんな「いちゲーム開発者」がゲームメディアで何かを書かせて頂く機会など普通はめったにないのですが、今回「僕が東京マラソンスカーレットネクサスのキャラのコスプレで走ることを触れて頂けないか」と非常に厚かましくも相談したところ、編集長のTAITAIさんの神のご厚意でレポートを書かせて頂くことになった次第です。

「一生に一回くらいマラソンにチャレンジするのも悪くないかも」

この記事を通じて「マラソンの魅力」というものが少しでも伝わり、今後の人生において「マラソンにチャレンジするという選択肢」を少しでも考えてもらえるきっかけになれば幸いです。

そして、そのついでにゲームのコスプレで走る変な開発者のことをチラッとでも知って頂けると嬉しいです(笑)

『スカーレットネクサス』ディレクター・穴吹健児氏による東京マラソン完走の記録_001
穴吹・カサネ・ランドール

東京マラソンとは?

2007年から開催されているマラソン大会で、東京都庁からスタートし、浅草や秋葉原東京タワー周辺などの観光地を含む東京都内をぐるりと巡り、東京駅前の行幸通りでフィニッシュとなります。

フルマラソン42.195km)と10.7kmとのコースがあり、フルマラソンは満19歳以上、10.7kmは満16歳以上であれば参加可能です。
いきなりフルマラソンはちょっと……という方は、まずは10.7kmに参加してみるのも良いかもしれません。

オリンピックなどの選考に関係するレースである一方で、僕のような完走を目的としたエンジョイ市民ランナーも沢山参加する大会で、今年も38,000人ほどが東京の街を駆け抜けました。

世界で最も名高い6つのマラソン大会の1つに選ばれており、海外の方の参加率も非常に高いです。

なぜ東京マラソンを走るのか?

元々、コロナ期に上司の影響でほぼ毎日ジョギングをしていたのですが、同時期にスカーレットネクサスを知ってもらうために、ゲームのスクショをX(旧Twitter)上に毎日アップするという活動も行っておりました。(今もやってます)

それら2つの活動がかけ合わさりスカネクのコスプレで東京マラソンを走る」という、1つの答えに到達しました。

スミマセン、よくわからないですよね(笑)
自分が作ったゲームを全力で推す様を、マラソンを通じて発信できたら、そのゲームを好きになってくれた方、プレイしてくれた方に「ちょっと面白い感じで感謝の気持ちを伝えられるかな」と思い、チャレンジしてみることにしました。

ただ、それだけでなく、シンプルに「東京の街を走ってみたい」という想いがありました。
普段、電車で通っていた場所に車で行ってみることで、点と点が繋がって線になり、その街に対する解像度が上がったという経験がある方はいないでしょうか?

僕は新宿によく遊びに行っていたのですが、初めて車で行った時にその感覚になり、もし車ではなく「自分の足で走った時にどんな景色が広がっているんだろう」というワクワクする気持ちがありました。

そんな幾つかの想いで僕のココロはオドリ、気づけば「東京マラソン 応募」で検索していました。

申し込み

東京マラソンにはオフィシャルサイトがあり、ここから応募することが出来ます。

毎年3月の第一日曜日に開催されるのですが、応募のタイミングはかなり早く、前年の8月に申し込みをする事になります。
東京マラソン2024に関しては、応募は2023年8月14日8月25日の期間と限られています。

「走るのはまだまだ先だ」と構えていたら、うっかり応募期間を逃してしまいそうな時期である一方で、「走るのが決まってから本番までの準備期間がしっかり取れる」スケジュール感となっています。

倍率は10倍以上と言われており、簡単には当選しないことでも有名です。
実は僕は昨年、当選しており、2年連続は流石に難しいだろうと思いながらの応募だったのですが、なんと今年も当選。
もの凄い幸運だという事を自覚しつつ、「走れない方の分までしっかり走らなければ」という使命感のようなものが湧いてきます。

本番に向けたトレーニング

当選の連絡を受けてからマラソン当日まで半年ほどあり、その期間を使って準備をします。
僕は普段、5km~7kmくらいのジョギングをしており、数カ月かけてその距離を延ばしていきます。
最初は中々、長い距離を走ることが出来ないのですが、死にかけるたびに強くなることで身体が徐々に長距離に慣れていきます。

その内、20km程度であれば何とか走れるようになるものの、その先の30kmに大きな壁があり、30kmを超えて走ると途端に足が前に出なくなったり、息が苦しくなってきたりします。

長距離のジョギングでしんどくなった時は「今スタートしたつもりになる」という技で乗り切れることもあるのですが、30kmを超えると「蓄積ダメージが100%を超えた状態」である事を自分に隠せなくなり、その技も通用しなくなります。
ヘロヘロで帰宅して家族に介抱されるという日もありました。

そんなこんなで本番に向けたトレーニングを重ねます。

『スカーレットネクサス』ディレクター・穴吹健児氏による東京マラソン完走の記録_002
練習で普段走る道