※『ウマ娘 プリティーダービー』メインストーリー第2部のネタバレを含みますので、ご注意ください。

ウマ娘 プリティーダービー(以下、『ウマ娘』)のストーリーは涙なしでは見られない。

アニメもそうだ。映画もそうだ。漫画もそうだ。もちろんゲームもそうだ。

メジロマックイーンライスシャワーウイニングチケットナリタブライアンサイレンススズカスペシャルウィーク……メインストーリー第1部で描かれた物語はどれも涙腺を刺激してくるズルい展開の連続だった。めっちゃ泣く。

そして、そんなメインストーリーの第2部が、2025年7月22日に完結を迎えた。

メインストーリー第2部で描かれたのは「牝馬の歴史」をモチーフとしたストーリー。その中心にいたのは、輝かしい戦績を残すも、志半ばでターフを去った競走馬をモチーフとするラインクラフトと、その想いを受け取ったフサイチパンドラだ。

史実では繋がることのなかった絆が交わる。だからこそ『ウマ娘』の物語は、彼女たちの想いが強く、そして切なく描かれるのだ。

このたび電ファミニコゲーマーでは、メインストーリー第2部完結を記念して、ラインクラフト役の小島菜々恵さんと、フサイチパンドラ役の佳原萌枝さんへお話をお聞きする機会に恵まれ

ラインクラフト役の小島菜々恵さん。
フサイチパンドラ役の佳原萌枝さん。

インタビューでは、おふたりがどのように役作りや収録に臨んだのか。ウマ娘に声が吹き込まれる瞬間のお話から、キャスト視点でのメインストーリー第2部の見どころについても語っていただいた。

加えて、取材の場に同席していただいたCygamesのシナリオ担当も交えてお話する時間も。

ラインクラフトが主人公に選ばれた理由や、なぜ今彼女たち、牝馬をモチーフにしたストーリーを描いたのか。またストーリーを語るには欠かせないキングヘイローの存在。そして、史実のエリザベス女王杯とは異なるIF展開に込められたフサイチパンドラの成長のドラマなど、『ウマ娘』メインストーリー第2部の制作秘話をここぞとばかりにお聞きした。

役を演じるキャストと、シナリオ担当。普段なかなか見ない珍しい組み合わせだからこそ飛び出したエピソードもあるので、ぜひ楽しんでいただきたい。

取材・文/世界のザキヤマ
編集/竹中プレジデント

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メインストーリー第2部はキングヘイローが素敵で最高!

──メインストーリー第2部が7月22日に完結を迎えたわけですが、前編から中編、後編にかけてさまざまなウマ娘たちの物語が描かれました。ご自身が演じられたウマ娘以外で、印象に残っているウマ娘をあえてひとり挙げるとしたら誰になりますか?

小島さん:
ひとりですか! 難しいですね……。私としては、作中でラインクラフトと競い合ったデアリングハートなんですけど、ただキングヘイローも……。

佳原さん:
わかります! 私もラインクラフトキングヘイローかで悩んでいます。

小島さん:
第2部のキング、よすぎるんですよ!! 高松宮記念で、ようやく勝利を手にして吠えるところ、佐伯伊織さん(キングヘイロー役)の堰を切ったような魂の叫び、めちゃくちゃ震えましたね

(※取材に同席しているシナリオ担当より、あの叫びの演技が一発OKだったことが告げられる)

小島さん:
ええええ~~~、すごい! かっこよすぎる……!!

──キングいいですよね……!!

佳原さん:
キングは後輩たちへの対応のバランスが絶妙ですよね。

後編でも、チームの後輩であるパンドラと、自分に懐いてくれているカワカミプリンセス、このふたりに対する対応が本当に素敵で……最高です。

小島さん:
第2部を通して、トレーナーの女房感もありましたよね。

佳原さん:
わかる。最前線で競い合うウマ娘たちからは一歩引いて優しく見守ってくれて、道を外さないようにさりげなく軌道修正もしてくれて……。

カワカミに対してお茶目な嘘をついて諭すシーンのように、ちょっと不器用なところを見せてくれるのも好きです。

小島さん:
うんうん、わかる……。後輩を導く姿がね……本当に素敵なんです。

佳原さん:
チーム<アスケラ>に入ってなくても懐いちゃいますよね。

──いちトレーナー(ユーザー)としても完全に同じ気持ちです。キングヘイローとは別に、それぞれ思い浮かんだウマ娘についてもお聞かせいただけますか。小島さんがデアリングハートに惹かれた理由について、教えていただけないでしょうか。

小島さん:
ハートがNHKマイルカップでクラフトに負けた後に「なんであなた、そんなに強いの?」と問いかけるシーンがあるんです。

クラフトの「繋いでいきたい」気持ちが強さの根源という答えを聞いて、自分が勝つことばかり考えていたハートはハッとして握手を求める……その姿にすごく共感しました。

私も声優のお仕事でオーディションという「勝ち負けの世界」を経験しているので、ハートの気持ちが痛いほどわかるんです。

──デアリングハートはスポ根感が強いウマ娘でもありましたよね。レース前に山にこもって修行したり。佳原さんはラインクラフトを挙げられましたが、いかがでしょう。

佳原さん:
やっぱりパンドラと一番関わりのあるウマ娘というのが大きいです。パンドラって、チーム<アスケラ>ではあるものの、深く関わったウマ娘はクラフトくらいなんですよ。

──パンドラ視点だと、世界の中心にクラフトがいた、と言っても過言ではないですよね。

佳原さん:
それに、私、メインストーリー第2部の前編、中編で見てきたクラフトの葛藤や苦しみを知っているので……。

そんな状況なのに、不器用で世間知らずなパンドラを優しく包み込んで導いてくれるクラフトって本当にすごいと思うんです。パンドラにとってはもちろん、私にとっても特別な存在です。

小島さん:
私も演じながら「クラフトはなんてすごい子なんだ!」と常々思っています。クラフトは私の中では「こうなりたい」という姿、理想像かもしれません。

ラインクラフトからフサイチパンドラへ。「繋ぐ」がテーマのメインストーリー第2部

──続いては、ラインクラフトフサイチパンドラを演じられたおふたりの視点から、メインストーリー第2部の「ぜひここを見てほしい!」というシーンを教えていただけますか。

小島さん:
私はやっぱり、ストーリーレースですね。とくに桜花賞のレースがめちゃくちゃ熱いんですよ。

──史実でも、ラインクラフトが初めてGⅠを制した記念すべきレースですね。

小島さん:
モチーフとなったラインクラフト号が実際に走っている映像も見たんですが、再現度がすごくて感動しました。

競い合って、ゴール前で抜いていく様子が、『ウマ娘』作中のレースに落とし込まれているんです。制作陣のみなさんのこだわりとリスペクトが詰まっているので、ぜひ史実のレースと見比べながら注目してほしいシーンです。

──前編から後編にかけて、レースや他ウマ娘とのやりとりを経て、ラインクラフトが成長していく姿が描かれていくのが印象的でした。

小島さん:
そうですね。最初は同期の中でもどこかフワフワしていた子が、パンドラという後輩ができて、彼女を導く「先輩クラフト」になっていく。その成長の過程を見ていただきたいですね。

──ありがとうございます。では続いて、佳原さんお願いします。

佳原さん:
メインストーリー第2部全体を通して「繋ぐ」というテーマがあって、世代を超えて想いが繋がっていく様子が描かれているのが、すごく素敵ですよね

パンドラも、クラフトも、ライバルたちも含め、それぞれ違う信念を持った、いろんなタイプのウマ娘たちの想いが、どんな風に受け継がれてどこに繋がっていくのか。

その先を、みなさんは見届けてくださったと思うんですけど、現実の競馬の未来にまで想像が膨らむような、奥深い魅力があるストーリーになっていると思います。

──パンドラ自身も、その「繋ぐ」というテーマの中心として描かれたウマ娘ですよね。

佳原さん:
そうですね。後編で描かれるパンドラの成長は、ひとりで成し遂げたものじゃなくて、クラフトに導いてもらったことがすごく大きいです。

最初は「勝てるから楽しい」くらいに思っていた子が、辛さを乗り越えて、クラフトが残してくれたものを「私が次に繋げたい」と、強く思うようになっていくんです。

──自己中心的に見えたフサイチパンドラが、他者の想いを背負うようになる。それだけでも大きな変化です。

佳原さん:
フワフワした雰囲気のパンドラですけど、意外と(ストーリーの後半になると)「自分が自分が」という自我の強さよりも、くーちゃん先輩(ラインクラフト)から継いだものへの想いが強くなっていると思うんです。そんな彼女の気持ちの変化も見どころです!

たったひと言のセリフに20テイク、別日リテイクも。こだわりぬかれたボイス収録の裏側

──おふたりは現在、キャストとして『ウマ娘』に関わってらっしゃっていますが、『ウマ娘』というコンテンツに、最初に触れたきっかけを教えていただけますか。

小島さん:
私はテレビの音楽番組で見た「うまぴょい伝説でした。一度聴いたら忘れられない曲でした。

──『うまぴょい伝説』のインパクトはすごかったですよね。佳原さんはいかがですか?

佳原さん:
私はTVアニメ第1期を見たのが『ウマ娘』に最初に触れたタイミングでした。でも、それ以上に印象に残っているのが、ゲームがリリースされたときに聞いた『GIRLS’ LEGEND U』です。とにかく衝撃的でした。

小島さん:
うんうん。映像のクオリティが高くて本当にびっくりした。

佳原さん:
ね! ライブシーンの動きもすごいよね。

──そこからオーディションを受けて、合格し、それぞれの役を演じていくことになるわけですが、役作りや収録の際に印象に残っている出来事はありますか?

佳原さん:
記憶に残っているのが、「だってあたし、天才だしィ?」というメインストーリー第2部 後半に出てくるセリフの収録です。このひと言だけで20テイクくらい録り直したんです。

──20テイクもですか!? 

佳原さん:
はい。パンドラ自身、もともとは口癖で「天才だし♪」って言っていたと思うんです。でも、いろいろ経験を重ねて、いろいろな感情が入ってからの「天才だし」となると「単に自分が天才である」と宣言するだけの言葉ではなくなっているので、そのニュアンスを表現するのがとても難しかったです。

──たったひと言にそこまでリテイクが発生するものなんですね……。小島さんはいかがですか?

小島さん:
私もかなり撮り直しましたね。とくに前編のタイミングでは、ラインクラフトの演技をぜんぜん掴めていなかったのもあって、リテイク数はすさまじいことになっていたと思います。

ストーリーレースの収録では、出走するウマ娘のキャスト陣みんなでマイクの前に立って映像を見ながら演技をしたのですが、私だけ別日でリテイクということも少なくありませんでした。

──キャスト陣が揃って収録するというのは、ゲームでは珍しいですよね。

佳原さん:
私は、ストーリーレースも全部ひとりでの収録でした。前編、中編はみんなで収録していたと思うと、ちょっとうらやましいですね(笑)。

パンドラの同期は、作中だとカワカミプリンセスだけですし、個別での収録だったのでキャストの高橋花林さんにもまだお会いしたことがありません。

シナリオ担当:
ラインクラフトの場合は同世代との競い合いが肝だったので、4人一緒の収録が非常に重要でした。逆にパンドラはどちらかというと単騎主人公。オークスでも、カワカミプリンセスは一切振り向かないし、パンドラも追いつけない。そのドラマを描くうえでのひとり収録だった、という側面はあります。

おふたり(小島さん・佳原さん):
なるほど~!

──メインストーリー第2部の収録について、振り返ってみて現場はどうでしたか?

佳原さん:
ひとつひとつのセリフにこだわりを持って、Cygamesのスタッフの方々が時間をかけて一緒に作ってくださるので、すごく心強かったです。

役に対する自分の解釈をぶつけてみて、「ああじゃない、こうじゃない」と一緒に探っていく作業は、本当に楽しかったし、やりがいがありました。

小島さん:
私も同じです。ここまで細かいところまで一緒に作り上げていただいたのは、初めての体験だったかもしれません。