jasrac 株式会社エクシングが発表したカラオケで歌われた曲のランキング「2010年JOYSOUND年間総合ランキング」では、『magnet』(4位)や『裏表ラバーズ』(6位)など音声合成ソフト"ボーカロイド"を用いた楽曲がトップ10のうち5曲を占めた。しかし、「ボカロP」と呼ばれるこれらの楽曲制作者には、これまで使用料が支払われていなかったという。こうした背景から、JASRAC日本音楽著作権協会)と著作権信託契約を結ぶボカロPが増えている。『既成事実』などの楽曲を制作したデッドボールP(通称:デP)氏は、2011年3月5日に放送されたニコニコ動画の生放送「新しい著作権のかたち ~JASRAC菅原理事長と考える~」で、「JASRACに信託するのが現状ではほぼ唯一の方法」と語った。

「素人に使ってもらう分には全然構わないんだけど、企業が有料で自分たちの曲を使って儲けているのに、それで分配がないっていうのはやっぱり気持ちが悪い」

 デP氏は自身の楽曲の使用許可を企業に出したものの、一銭も入って来ないことにモヤモヤした思いを抱いていたという。そこで検討を重ねた結果、「JASRACに信託するのが現状ではほぼ唯一の方法」と判断した。

 しかし、「(ボーカロイドによる楽曲を)カラオケで歌えて嬉しい」とする人がいる一方で、著作権の信託や管理を快く思わない人もいるようだ。番組後半の質問コーナーでは「著作権には原則反対です。作家の収入確保なんてケチ臭い」という視聴者からのメールが読み上げられた。これに対しデP氏は、「いやあ、ひどいよ。じゃあなんですか、(自分は)一生コンビニでバイトしながら...なんか...」と、言葉を詰まらせた。

 デP氏はまた、著作権を守らないと「クリエーターが死に文化が死ぬ」とし、「好きなクリエーターさんにちょっとでもいいご飯を食べてもらいたいと思うなら、ぜひ(著作権の侵害に)気をつけてください」と呼びかけた。

(野吟りん)

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